MAKECONTEXT(3) | Linux Programmer's Manual | MAKECONTEXT(3) |
makecontext, swapcontext - ユーザーコンテキストを操作する
#include <ucontext.h>
void makecontext(ucontext_t *ucp, void (*func)(), int argc, ...);
int swapcontext(ucontext_t *oucp, const ucontext_t *ucp);
System V 的な環境では、 mcontext_t および ucontext_t という 2 つの型と、 getcontext(3), setcontext(3), makecontext(), swapcontext() という 4 つの関数が <ucontext.h> で定義されており、あるプロセス内部で制御下にある複数のスレッド間で、 ユーザーレベルのコンテキスト切替えができるようになっている。
これらの型と、最初の 2 つの関数については、 getcontext(3) を参照のこと。
makecontext() 関数は、ポインター ucp が指すコンテキストを変更する (ucp は以前の getcontext(3) 呼び出しで得られたものである)。 makecontext() を起動する前には、呼び出し者は、このコンテキスト用に 新しいスタックを確保し、そのアドレスを ucp->uc_stack に代入し、 さらに後継のコンテキストを定義し、そのアドレスを ucp->uc_link に 代入しなければならない。
このコンテキストが将来 (setcontext(3) または swapcontext() によって) 有効にされると、関数 func が呼ばれ、 引き数として argc 以降の整数 (int) 引き数の列が渡される。 呼び出し者は argc にこれらの引き数の個数を指定しなければならない。 この関数が戻ると、後継のコンテキストが有効になる。 後継コンテキストのポインターが NULL の場合、そのスレッドが終了する。
swapcontext() 関数は現在のコンテキストを ポインター oucp が指す構造体に保存し、 ポインター ucp が指すコンテキストを有効にする。
成功すると、 swapcontext() は返らない (しかし後に oucp が有効になった場合には返ることがある。 このときには swapcontext() は 0 を返すように見える。) 失敗すると、 swapcontext() は -1 を返し、 errno をエラーに応じて設定する。
makecontext() と swapcontext() は、バージョン 2.1 以降の glibc で提供されている。
関数 makecontext() と swapcontext() はスレッドセーフである。
SUSv2, POSIX.1-2001. POSIX.1-2008 では、移植性の問題から makecontext() と swapcontext() の仕様が削除されている。 代わりに、アプリケーションを POSIX スレッドを使って書き直すことが 推奨されている。
ucp->uc_stack の解釈は sigaltstack(2) の場合と同じである。 すなわちこの構造体には、 スタックとして用いられるメモリー領域の開始アドレスと長さが含まれ、 これはスタックが伸びる方向がどちらであるかには関係しない。 したがって、ユーザープログラムはこの件については心配しなくてよい。
int とポインター型が同じ大きさであるアーキテクチャーでは (x86-32 はその例であり、両方の型とも 32 ビットである)、 makecontext() の argc 以降の引き数としてポインターを渡してもうまく動くかもしれない。 しかしながら、このようにすると、移植性は保証されず、 標準に従えば動作は未定義であり、ポインターが int よりも大きいアーキテクチャーでは正しく動作しないことだろう。 それにも関わらず、バージョン 2.8 以降の glibc では、 makecontext() に変更が行われ、(x86-64 などの) いくつかの 64 ビットアーキテクチャーで 引き数としてポインターを渡すことができるようになっている。
以下のサンプルプログラムは、
getcontext(3), makecontext(), swapcontext()
の使用方法の例を示すものである。
このプログラムを実行すると、以下のような出力が得られる:
$ ./a.out main: swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2) func2: started func2: swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1) func1: started func1: swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2) func2: returning func1: returning main: exiting
#include <ucontext.h> #include <stdio.h> #include <stdlib.h> static ucontext_t uctx_main, uctx_func1, uctx_func2; #define handle_error(msg) \
do { perror(msg); exit(EXIT_FAILURE); } while (0) static void func1(void) {
printf("func1: started\n");
printf("func1: swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2)\n");
if (swapcontext(&uctx_func1, &uctx_func2) == -1)
handle_error("swapcontext");
printf("func1: returning\n"); } static void func2(void) {
printf("func2: started\n");
printf("func2: swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1)\n");
if (swapcontext(&uctx_func2, &uctx_func1) == -1)
handle_error("swapcontext");
printf("func2: returning\n"); } int main(int argc, char *argv[]) {
char func1_stack[16384];
char func2_stack[16384];
if (getcontext(&uctx_func1) == -1)
handle_error("getcontext");
uctx_func1.uc_stack.ss_sp = func1_stack;
uctx_func1.uc_stack.ss_size = sizeof(func1_stack);
uctx_func1.uc_link = &uctx_main;
makecontext(&uctx_func1, func1, 0);
if (getcontext(&uctx_func2) == -1)
handle_error("getcontext");
uctx_func2.uc_stack.ss_sp = func2_stack;
uctx_func2.uc_stack.ss_size = sizeof(func2_stack);
/* Successor context is f1(), unless argc > 1 */
uctx_func2.uc_link = (argc > 1) ? NULL : &uctx_func1;
makecontext(&uctx_func2, func2, 0);
printf("main: swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2)\n");
if (swapcontext(&uctx_main, &uctx_func2) == -1)
handle_error("swapcontext");
printf("main: exiting\n");
exit(EXIT_SUCCESS); }
sigaction(2), sigaltstack(2), sigprocmask(2), getcontext(3), sigsetjmp(3)
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2014-05-28 | GNU |