名前
pppoe - ユーザー空間 PPPoE
クライアント
書式
pppd pty 'pppoe [pppoe_options]'
[pppd_options]
pppoe -A [pppoe_options]
説明
pppoe は、PPPoE (Point-to-Point Protocol over
Ethernet) の
ユーザー空間クライアントであり、
Linux やその他の UNIX
系システムで利用できる。
pppoe
は、イーサーネット上で
PPP 接続を提供する PPP
デーモン pppd
と関連して動作する。
このような pppd
は多くの ADSL
サービス提供業者で使われている。
オプション
- -I interface
- -I
オプションは、使用するイーサーネットインターフェースを指定する。
Linux 上では、eth0 や eth1
が一般的である。
インターフェースは
pppoe を開始する前に
「アップ
(起動)」しておかなければならないが、
IP
アドレスを設定してはならない。
- -T timeout
- -T
オプションを用いると、
セッション中に timeout
秒間データのやりとりがない場合に
pppoe を終了する。
このオプションはおまけの安全装置として用いることを薦める。
ただし利用する場合は、PPP
がたくさんのトラフィックを通していて、
通常はタイムアウトが起こらないであろう事を確認しておくように。
一番良い方法は
lcp-echo-interval
オプションをつけて
pppd
を実行することである。
PPPoE タイムアウトは LCP echo
interval の 4
倍程度に設定するのが良い。
- -D file_name
- -D
オプションを用いると、
全てのパケットが指定したファイル
file_name
に書き出される。
このオプションはデバッグ専用のものである。
このオプションを用いると、大量の出力が行われて、非常に性能が下がる。
- -V
- -V
オプションを用いると、
pppoe
はバージョン番号を表示して終了する。
- -A
- -A
オプションを用いると、
pppoe は PADI
パケットを送信して、
(返信されてきた)
受信 PADO
パケットにあった
アクセス集信装置の名前を表示する。
このオプションを
pppd
と組み合わせて使ってはならない。
-A
オプションは、アクセス集信装置についての重要な情報を
対話的に取得することを目的としている。
- -S
service_name
- 使いたいサービスの名前を指定する。
pppoe
は、指定したサービスを提供する
アクセス集信装置とのセッションを初期化するだけである。
多くの場合、このオプションを指定するべきではない。
複数のアクセス集信装置があることが解っている場合や、
特別なサービス名が必要であることが解っている場合にのみ、
このオプションを使うべきである。
- -C ac_name
- 使いたいアクセス集信装置の名前を指定する。
pppoe
は、アクセス集信装置とのセッションを初期化するだけである。
多くの場合、このオプションを指定するべきではない。
複数のアクセス集信装置があることが解っている場合にのみ、
このオプションを使うべきである。
-S オプションと -C
オプションを両方指定した場合、
pppoe
が接続を初期化するためには、
両方にマッチする必要がある。
- -U
- このオプションを指定すると、
pppoe は discovery
パケット中の Host-Uniq
タグを使う。
これを用いると複数の
pppoe
デーモンを起動し、
それぞれの discovery
パケットが混信しないようにできる。
複数の pppoe
デーモンを同時に実行しようとする場合には、
全ての pppoe
デーモンにこのオプションを付けなければならない。
- -s
- このオプションを指定すると、pppoe
は 同期 PPP
カプセル化を使う。
このオプションを使う場合、
pppd に sync
オプションをつけなければならない。
もし動作するならば、
pppoe の CPU
オーバーヘッドを減らすことができるので、
このオプションを用いることを推奨する。
しかし、遅いマシンでは信頼性がないかもしれない
-- pppd
によるデータの書き込みと
pppoe
によるデータの読み込みに、
競合状態が起こるかもしれない。
のこのような理由により、デフォルトの設定は非同期である。
同期 PPP
でバグがあったりクラッシュしたりしたら、同期をオフにすること
--
同期のサポートについて私に
E
メールを送らないこと
!
- -m MSS
- このオプションを指定すると、
pppoe は TCP maximum segment size
(最大セグメントサイズ)
を
指定した値に固定
(clamp) する。 PPPoE
のオーバーヘッドにより、PPPoE
の最大セグメントサイズは
通常のイーサーネットカプセル化のものより小さい。
このため、PPPoE
を使ったゲートウェイの後にある
LAN
上のマシンで問題が発生する。
ゲートウェイの後ろに
LAN があり、
ゲートウェイが PPPoE
を使ってインターネットに接続されている場合、
-m 1412
オプションを使うことを強く推奨する。
これにより、LAN
上の全てのホストが
MTU
を設定するのを避けられる。
- -p file
- このオプションを指定すると、
pppoe はプロセス ID
を指定したファイルに書き出す。
pppoe のプロセス ID
を取得したり kill
したりするのに使うことができる。
- -e sess:mac
- このオプションを指定すると、
pppoe は発見 (discovery)
の段階を省略して、セッションの段階に移る。
セッションは sess
で指定され、
接続先の MAC
アドレスは mac
で指定される。
このモードは通常の使用を意図したものではない。
これは pppoe-server(8)
のために設計されている。
- -n
- このオプションを指定すると、
pppoe は discovery
ソケットをオープンしない。
このモードは通常の使用を意図したものではない。
これは pppoe-server(8)
のために設計されている。
- -k
- このオプションを指定すると、
pppoe
はセッションを終了して自らも終了するために、
PADT
フレームを送って終了する。
このオプションは、kill
するセッションを指定するために
-e
オプションと組み合わせて使わなければならない。
このオプションは、バグのある接続先が
セッションを終了できない場合に役立つ。
- -d
- このオプションを指定すると、
pppoe
はセッション情報を標準出力に書き出した後に、
発見を行って終了する。
表示されるセッション情報は、
-e
オプションで用いられる形式と全く同じである。
このオプションは PPPoE
の発見を初期化して、
その他の処理を行った後で、実際の
PPP
セッションを開始する。
注意して使うこと。
このオプションをループ中で使うと、
接続先を悩ませるような多くのセッションを作ってしまう。
- -f disc:sess
- -f オプションは、PPPoE
の discovery フレームと session
フレームで使う
イーサーネットフレームタイプを設定する。
タイプはコロンで区切られた
16 進数で指定する。
標準的な PPPoE
では、フレームタイプ
8863:8864 を使う。
接続先が標準的でないフレームタイプを使っていることが
はっきり解っている場合以外は、
このオプションを使うべきではない。
使用している ISP
(インターネットサービス提供業者)
が
標準的でないフレームタイプを使っている場合は、苦情を言った方がよい
!
- -h
- -h
オプションを指定すると、
pppoe
は使用法を表示して終了する。
PPPoE (Point-to-Point Protocol over Ethernet) は RFC 2516
に記述されている。
このプロトコルは、ブリッジしたイーサーネットワーク上で
セッションを抽象化して維持できる。
PPPoE は PPP
フレームをイーサーネットフレームで
カプセル化することにより動作する。
このプロトコルには、発見とセッションという
2
つの異なるステージがある。
発見ステージでは、ホストはアクセス集信装置を発見するために
特別な PADI (PPPoE Active Discovery Initiation)
フレームを
ブロードキャストする。
(一般的には、ただ 1
つの)
アクセス集信装置が
PADO (PPPoE Active Discovery Offer)
パケットを返し、
集信装置が存在することとサービスを提供することを知らせる。
ホストはアクセス集信装置を
1
つ選び、セッションを開いてもらうために
PADR (PPPoE Active Discovery Request)
パケットを送る。
アクセス集信装置は
PADS (PPPoE Active Discovery Session-Confirmation)
パケットで応答する。
この後、プロトコルはセッションステージに移行する。
セッションステージでは、ホストとアクセス集信装置の間で
イーサーネットフレームに埋め込まれた
PPP
フレームがやりとりされる。
通常のイーサーネット
MTU は 1500
バイトであるが、 PPPoE
のオーバーヘッドに加え、
カプセル化された PPP
フレームによる 2
バイトのオーバーヘッドがあるので、
PPP インターフェースの
MTU は最大 1492
バイトになる。 Linux
マシンをファイアーウォールとして使用しており、
ファイアーウォールの背後にあるインターフェースの
MTU が 1492
より大きいと、あらゆる問題が発生しうる。
実際、安全のためにファイアーウォールの後ろのマシンの
MTU を 1412
に指定しておくことを推奨する。
これにより、ヘッダに
TCP オプションと IP
オプションが入るという
最悪の場合も許容できる。
通常 PPP
は接続をシャットダウンするために
Link Control Protocol (LCP) を使う。
しかし PPPoE
の仕様では、接続をシャットダウンするために
特別な PADT (PPPoE Active Discovery Terminate)
パケットを
使うことも許されている。
このクライアントは、PPP
セッションに対する終了要求を受け取ると、
PADT
パケットを認識して正しくセッションを終了する。
設計の目標
この PPPoE
クライアントの設計目標は以下の通りである。
重要なものから順に並べてある:
- o
- 動作すること。
- o
- ユーザー空間のプログラムであり、カーネルへのパッチにはしない。
- o
- コードを読みやすくメンテナンスしやすくする。
- o
- 提案されている PPPoE
規格、RFC 2516
に完全に準拠する。
- o
- 絶対にハングアップしない
--
接続が切れた場合でも、検知して終了する。
接続を再開するラッパースクリプトを使えるようにする。
- o
- 能率を高くする。
これらの目標をすべて達成していると考えているが、
指摘・パッチ・アイディアなどがあれば
(もちろん)
受け入れる。
連絡を取るための情報については、私のホームページ
http://www.roaringpenguin.com
を参照すること。
注意
最良の結果を得るためには、pppd
の mtu オプションを 1492
にしなければならない。
このオプションを設定しなかった場合、
非常に大きなフレームを受け取るといった問題があった。
さらに、pppoe
がファイアーウォール上で動作している場合、
ファイアウォールの背後のマシンは
MTU を 1412
にしておくべきである。
問題がある場合は、システムログをチェックすること。
pppoe は重要なことを syslog
に記録している。
診断を完全にするためには、debug
レベルのメッセージを
記録できるようにしておいた方がよい。
著者
pppoe は、Luke Stras
による初期のバージョンに示唆を受けて、
David F. Skoll <dfs@roaringpenguin.com>
によって作成された。
pppoe
のホームページは
http://www.roaringpenguin.com/pppoe/
である。