TCSH(1) | General Commands Manual | TCSH(1) |
tcsh - ファイル名補完とコマンド行編集を追加した C シェル
tcsh [-bcdefFimnqstvVxX] [-Dname[=value]]
[arg ...]
tcsh -l
tcsh は、バークレイ版 UNIX の C シェル csh(1) と完全に 互換性があり、さらに機能強化したシェルです。 対話的なログインシェル、またシェルスクリプトのコマンドプロセッサの 両方の用途で使われるコマンドインタプリタです。 tcsh には、コマンド行編集 (コマンド行編集の項を参照)、 プログラム可能な単語の補完 (補完と一覧の項を参照)、 スペル訂正 (スペル訂正の項を参照)、 履歴 (ヒストリ置換の項を参照)、 ジョブ制御 (ジョブの項を参照)、 C 言語風の文法があります。 新機能の章では、csh(1) には存在しない、tcsh の 主な追加機能について説明しています。 このマニュアルを通じ、tcsh の機能のうち、 csh(1) のほとんどの実装 (特に 4.4BSD の csh) に ない機能について、ラベル (+) をつけてあります。 そして、csh(1) にあったけれども文書化されていなかった機能に ラベル (u) をつけてあります。
シェルへの 1 番目の引数 (引数 0 番) が `-' の場合、シェルは ログインシェルになります。 シェルを -l フラグを指定して起動することでも ログインシェルにできます。
残りのフラグは以下のように解釈されます。
フラグ引数の処理のあと、もし引数が残っていて、かつ、 -c, -i, -s, -t のいずれのフラグも 指定されていなければ、残っている引数のうち最初のものは コマンドファイル、つまり「スクリプト」の名前とみなされます。 シェルはこのファイルをオープンし、`$0' による置換に備えて ファイル名を保存します。 多くのシステムは、スクリプトが本シェルと互換性のない version 6 または version 7 の標準のシェルを使っているため、 スクリプトの先頭の文字が `#' でない場合、 つまりスクリプトがコメントから始まらない場合、本シェルは それらの「標準」のシェルを起動して実行します。
残りの引数はシェル変数 argv に設定されます。
ログインシェルの場合は、実行開始に際し、まずシステムファイル /etc/csh.cshrc と /etc/csh.login を読み込んで実行します。 そしてシェルを起動したユーザのホームディレクトリの中から、 まずはじめに ~/.tcshrc (+) を読み込んで実行します。 もし、~/.tcshrc が見つからない場合は、~/.cshrc を 読み込んで実行します。 次に、~/.history (もしくは、シェル変数 histfile の値) を、 その次に ~/.login を、最後に、~/.cshdirs (もしくは、 シェル変数 dirsfile の値) (+) を読み込んで実行します。 コンパイルの仕方によって、シェルは /etc/csh.cshrc の後ではなく前に /etc/csh.login を読み込み、 ~/.tcshrc (または ~/.cshrc) と ~/.history の後ではなく前に ~/.login を読み込む場合があります。 シェル変数 version を参照してください。(+)
ログインシェルでない場合は、/etc/csh.cshrc と、 ~/.tcshrc (または ~/.cshrc) のみを起動時に読み込みます。
スタートアップファイルの例は、 http://tcshrc.sourceforge.net を見てください。
stty(1) や tset(1) のようなコマンドは、ログインする ごとに 1 度だけ実行される必要がありますが、これらのコマンドは、 普通は ~/.login ファイルに入れます。 csh(1) と tcsh の両方で同じファイルのセットを使う 必要があるユーザは、~/.cshrc だけを使い、その中で シェル変数 tcsh (値は任意) があるかどうかチェックして から、tcsh 特有のコマンドを使うようにします。または、 ~/.cshrc と ~/.tcshrc の両方を使うが、~/.tcshrc で、 source コマンド (組み込みコマンドの項を参照) を使い ~/.cshrc を読み込むようにします。 以下、このマニュアルの残りの部分で `~/.tcshrc' と表現したときは、 「~/.tcshrc、または ~/.tcshrc が見つからない 場合は ~/.cshrc」という意味で使います。
通常、シェルはプロンプト `> ' を表示し、端末からコマンドの読み込みを 開始します (引数処理と、コマンドスクリプトを含むファイルの処理のための シェルの使用については、後で説明します)。 シェルは、入力されたコマンド行の読み込み、読み込んだコマンド行を単語に 分解、およびコマンド履歴への格納、コマンド行の解析、 コマンド行の中のコマンドそれぞれの実行を繰り返します。
ログアウトするには、空の行で `^D' とタイプするか、`logout' するか、 `login' するか、シェルの自動ログアウト機構 (シェル変数 autologout を参照) を使います。 ログインシェルが実行終了する際には、ログアウトの状況に応じて シェル変数 logout を `normal' か `automatic' に設定し、 /etc/csh.logout ファイルと ~/.logout ファイルにある コマンドを実行します。 コンパイルの仕方によっては、シェルは、ログアウト時に DTR を落とす ことがあります。これについてはシェル変数 version を参照してください。
システムのログインファイル名、ログアウトファイル名は、 異なる csh(1) 間での互換性を保つために、 システムごとにファイルが違います。これについては、 関連ファイルを参照してください。
はじめに、コマンド行エディタについて説明します。 補完と一覧と、スペル訂正の 2 つの機能は、 編集コマンドとして実装されていますが、 特に分けて説明する必要があるため、項を改めて説明します。 最後に、編集コマンドの項で、シェルに特有の編集コマンドについて、 一覧をあげ、デフォルトのバインドとともに説明します。
コマンド行の入力データは、GNU Emacs や vi(1) で使われているものと、 よく似たキーシーケンスを使って編集できます。 シェル変数 edit がセットされているときのみ、編集できるように なっています。対話的なシェルでは、この値はデフォルトで 設定されています。 組み込みコマンド bindkey で、キーバインドを変更したり、 表示したりできます。 デフォルトでは、Emacs 形式のキーバインドが使われています (違う方法でコンパイルしなければそうなります。 シェル変数 version を参照)。 しかし、コマンド bindkey で、キーバインドを vi 形式に 一括して変更できます。
シェルは、つねに矢印キー (環境変数 TERMCAP で定義されたものです) を、次のように割り付けています。
他の 1 文字バインドによって、変わっていなければこのようになります。 このようなバインドにしたくない場合、settc を使って、矢印キーの エスケープシーケンスを空の文字列にセットすることができます。 ANSI/VT100 の矢印キーシーケンスは、つねにバインドされています。
その他のキーバインドは、そのほとんどは、Emacs、vi(1) ユーザが 予想できるものです。また、簡単に bindkey コマンドで表示させる こともできるので、ここで、それらのバインドを並べあげる必要は ないでしょう。 同じく、bindkey コマンドは、それぞれの編集コマンドを 簡単な説明付きで、表示させることができます。
注意: 「単語」という概念に関して、編集コマンドは、シェルと同じ概念を 持たないことに注意してください。 エディタは、シェル変数 wordchars の中にはない非英数文字 (英文字、数字のどちらでもない文字) によって単語の区切りを決めます。 一方、シェルは、ホワイトスペース (空白、タブ、改行) と、 字句構造の項で列挙する特殊な意味を持つ文字のいくつかを 識別します。
シェルは、一意に決まる短縮形を与えられると、しばしば単語の補完を 行うことができます。 単語の一部 (たとえば `ls /usr/lost') をタイプして、タブキーを押すと、 編集コマンド complete-word が実行します。シェルは、 ファイル名 `/usr/lost' を補完して `/usr/lost+found/' にします。 このとき、入力バッファの中で、不完全な単語を完全な単語で置き換えます。 (注意: 末端の `/' について: 補完では、ディレクトリ名を補完すると 最後に `/' を付け加えます。 そして、ディレクトリ名以外の単語を補完すると、末尾に空白文字を 付け加えます。こうすることで、タイプ入力が速くなり、また、 補完が成功したことが一目で分かります。 シェル変数 addsuffix のセットをはずせば、 これらを付け加えなくすることもできます。) 合致するものが見当たらない場合 (おそらく `/usr/lost+found' が 存在しない場合でしょう)、端末のベルが鳴ります。 単語がすでに補完されている場合 (システムに `/usr/lost' が 存在する場合か、あるいは、ユーザがはるか先まで考えて、すべてを 入力してしまっていた場合でしょう)、`/' または空白文字が末尾に まだなければ、付け加えられます。
補完は、行の一番最後でなくても、途中どこででも機能します。 そして、テキストの補完によって、その分、行の残りは右方向へ押されます。 単語の中間で補完された場合、しばしばカーソルの右側に文字が残り、 それを消すはめになることもあります。
コマンドと変数は、ほとんど同じ方法で補完できます。 たとえば、`em[tab]' とタイプした時、使用しているシステムで `em' から始まるコマンドが唯一 emacs だけならば、 `em' は `emacs' と補完されます。 補完は、path 中のディレクトリにあるコマンドか、 フルパスが与えられれば、そこにあるコマンドを見つけ出すことができます。 `echo $ar[tab]' とタイプした時、他に `ar' から始まる変数がなければ、 `$ar' は `$argv' と補完されます。
シェルは、入力バッファを解析して、補完したい単語を、ファイル名としてか、 コマンドとしてか、変数としてか、どのように補完すべきかを決めます。 バッファの中の最初の単語と、`;', `|', `|&', `&&', `||' の すぐ次にくる単語は、コマンドとみなします。 `$' で始まる単語は、変数とみなします。 その他のものは、ファイル名とみなします。 空の行は、ファイル名として `補完されて' います。
いつでも、`^D' とタイプすることで、編集コマンド delete-char-or-list-or-eof を実行させて、 補完可能な単語の候補を並べ挙げることができます。 シェルは、組み込みコマンド ls-F (q.v.) を使って、 補完可能な候補を並べ挙げます。 そして、プロンプトと未完成のコマンドラインを再表示します。 次に例を示します。
シェル変数 autolist をセットしていれば、シェルは、 補完に失敗したときはいつでも残りの選択肢を表示します。
シェル変数 autolist を `ambiguous (あいまいな)' に セットした場合は、補完に失敗して補完される単語へ新しい文字を それ以上追加できなくなったときに限り、選択肢を表示します。
補完するファイル名には、変数、自分もしくは他人のホームディレクトリ (`~' で短縮したもの。ファイル名置換の項を参照)、 ディレクトリスタックエントリ (`=' で短縮したもの。 ディレクトリスタック置換の項を参照) を含めることができます。 たとえば、次のようになります。
あるいは、
変数については、編集コマンド expand-variables を指定して使っても 展開できることに注意してください。
コマンド delete-char-or-list-or-eof は、行の最後でのみ リストを表示します。 行の中間の場合、カーソル位置の文字を消去します。 空行の場合、ログアウトします。ただし、ignoreeof がセットされて いれば、何もしません。 `M-^D' は、編集コマンド list-choices にバインドされていますが、 これは行中のどこでも、補完の候補のリストを表示します。 list-choices (または、delete-char-or-list-or-eof のところで 列挙するコマンドで、消去するコマンド、しないコマンド、 リスト表示するコマンド、ログアウトするコマンドのどれでも) は、そうしたい場合、組み込みコマンド bindkey で `^D' にバインドすることもできます。
編集コマンド complete-word-fwd と complete-word-back (デフォルトでは、どのキーにも割り付けられていません) を使うことで、 補完候補のリストを上または下に順に巡り、リスト上の現在の単語を、 次の単語または 1 つ前の単語に置き換えることができます。
シェル変数 fignore に、補完の際に無視するファイルの サフィックスのリストをセットできます。 次の例を考えてみます。
`main.c~' と `main.o' は、fignore にサフィックスが 登録されているために、補完では無視されます (しかしリスト上には表示されます)。 ファイル名置換の項で解説しているように、home に 拡張されないようにするために、`~' の前に `\' が必要なことに 注意してください。補完の候補が1 つしかない場合は、 fignore の設定は無視されます。
シェル変数 complete が `enhance(拡張)' にセットされていた場合、補完は 1) 大文字小文字の区別を無視し、 2) ピリオド、ハイフン、アンダスコア (`.', `-', `_')を、 単語を分ける記号であるとみなし、ハイフンとアンダスコアは 同等なものとみなします。 次のようなファイルがある場合、
`mail -f c.l.c[tab]' とタイプすれば、`mail -f comp.lang.c' のように補完され、^D の場合には、`comp.lang.c' と `comp.lang.c++' が リストとして表示されます。 `mail -f c..c++[^D]' とタイプした場合は、`comp.lang.c++' と `comp.std.c++' が表示されます。 次のファイルがあるディレクトリで、`rm a--file[^D]' とタイプした 場合、
の 3 つのファイルすべてが一覧表示されます。 なぜならば、大文字小文字の区別は無視されて、 ハイフンとアンダスコアは同等と解釈されるからです。しかしながら、 ピリオドは、ハイフンやアンダスコアと同等ではありません。
補完と一覧は、他にもいくつかのシェル変数の影響を受けます。 そのひとつ、recexact をセットすると、続けてタイプすれば より長い単語に合致するような場合でさえも、 最短で一意に一致する単語に合致するようになります。たとえば、
この場合はベルが鳴るだけです。 なぜなら、`fo' は、`fod' または `foo' に展開できるからです。 しかし、さらに `o' とタイプすると、
`food' や `foonly' も合致するにもかかわらず、 補完は `foo' で完了します。 autoexpand をセットすると、補完を試みる前に、毎回、 編集コマンド expand-history を実行するようになります。 autocorrect をセットすると、補完を試みる前に、毎回、 その単語のスペル訂正をするようになります (スペル訂正の項を参照)。 correct をセットすると、`return (enter)' キーを押したあと、 自動的にコマンドを補完するようになります。 matchbeep をセットすると、補完に際して、状況の変化に応じて、 ベルを鳴らしたり、鳴らないようにできます。 nobeep をセットすると、まったくベルを鳴らさないようにできます。 nostat には、ディレクトリのリストやディレクトリに 合致するパターンをセットでき、これらのディレクトリで補完機構が stat(2) を実行しないようにすることができます。 listmax や listmaxrows にセットすることで、 まず問い合わせずに一覧表示する項目の数や、列の数を、それぞれ 制限することができます。 recognize_only_executables をセットすると、 シェルがコマンド一覧を表示する際に、実行可能ファイルだけを 一覧表示するようにさせることができます。ただし、動作はきわめて 遅くなります。
最後に、組み込みコマンド complete を使って、ファイル名、 コマンド、変数以外の単語を補完する方法をシェルに教えることができます。 補完と一覧は、グロブパターン (ファイル名置換の項を参照) 上では機能しませんが、編集コマンド list-glob と expand-glob はグロブパターンに対し同等の機能として実行されます。
シェルは、補完したり一覧表示するのと同様に、ファイル名、コマンド、 変数名のスペルを訂正することができることがあります。
個々の単語は、編集コマンド spell-word (普通は M-s と M-S に バインドされています) でスペル訂正できます。入力バッファ全体は spell-line (普通は M-$ に割り付けられています) で スペル訂正できます。 シェル変数 correct に `cmd' を設定されておけば、コマンド名が スペル訂正されます。`all' を設定しておけば、リターンがタイプされる たびに行全体がスペル訂正されます。 autocorrect がセットされていれば、単語に補完を試みる前に その単語をスペル訂正します。
スペル訂正が、ここで説明した方法のいずれかにより呼び出され、 コマンド行のどこかにスペル誤りがあると判断すると、 シェルは、次のように訂正済みのコマンド行を表示し入力を待ちます。
これに対し、`y' または空白文字で答えると、訂正済み行を実行し、 `e' で答えると、入力バッファに訂正前のコマンドを残し、 `a' で答えると、`^C' が押された場合と同様にコマンドを中止し、 それ以外の場合は、元のままの行を変えないで実行します。
スペル訂正は、ユーザ定義の補完を識別します (組み込みコマンド complete を参照)。 もし、補完が実行される位置で、入力された単語が補完リストの中の単語に 似ていたとき、スペル訂正は、ミススペル記録して、見つかった単語を 訂正候補として提案します。しかし、入力された単語がその位置で、 どの補完候補にも合致しなかった時、スペル訂正は、 ミススペルを示しません。
補完と同様、スペル訂正は行のどこでも機能します。行の残りを右に 押し出したり、残りの余分な文字をカーソルの右に残したりします。
注意: スペル訂正は、意図どおりに動作する保証はありません。 そして、ほとんど実験的な機能として提供されています。 提案、改善する点があれば歓迎します。
`bindkey' はキーバインド一覧を表示し、 `bindkey -l' は編集コマンドの一覧と短い解説を表示します。 ここでは、新しい編集コマンド、または、特に興味深い編集コマンドに ついてのみ解説します。 エディタのキーバインド割り付けの記述については、 emacs(1) と vi(1) を参照してください。
デフォルトでそれぞれのコマンドにバインドられた文字 (あるいは複数文字) は、括弧の中に示しました。 `^character' は制御文字を意味します。 `M-character'はメタ文字です。 メタキーがない端末の場合は、escape-character とタイプします。 大文字小文字の区別はありますが、 デフォルトで英文字に割り付けられるコマンドは、便宜上、 大文字、小文字の両方にキーバインドされています。
この他の文字で、self-insert-command にバインドされている 以外のものをタイプすると、検索が終了します。入力バッファの現在の行は そのままになり、タイプした文字は通常の入力として解釈されます。 特に、キャリッジリターンの場合は、現在の行を実行に移します。 Emacs モードのみです。 i-search-fwd と history-search-backward も参照してください。
シェルは入力された行をタブや空白で単語に分割します。 特殊文字 `&', `|', `;', `<', `>', `(', `)', 2 文字繰り返しの `&&', `||', `<<' , `>>' は、空白で囲まれているか どうかにかかわらず、常に単語の区切りになります。
シェルの入力が端末からではないとき、文字 `#' は、コメントの始まりと して扱われます。`#' とその後ろの入力行の残りはコメントと解釈され、 文法解析されずに捨てられます。
特殊文字 (空白、タブ含む) は、その文字の直前にバックスラッシュ `\' を置くことで、または、単一引用符 `''、二重引用符 `"'、 逆引用符 ``' で囲むことで、特殊な意味合いを持たないようにしたり、 場合によっては、他の単語の一部分にすることもできます。 他に引用がなされない限り、`\' の直後に改行文字を置くと、改行文字は 空白扱いになります。しかし、引用中では、この文字の並びは改行文字に なります。
さらに、ヒストリ置換を除く、すべての置換 (次項を参照) は、置換を含む文字列 (あるいは文字列の一部) を 単一引用符で囲むことで防ぐことができます。 あるいは、重大な文字 (たとえば、変数置換 ならば `$' や、コマンド置換ならば ``') を `\' で クォートすることで 防ぐことができます。(エイリアス置換も例外ではありません。 一度定義された alias に対して、何らかの方法でその単語の どれかの文字をクォートすることで、そのエイリアスの置換を防ぐことが できます。エイリアスをクォートする普通の方法は、そのエイリアスの前に バックスラッシュを置くことです。) ヒストリ置換は、バックスラッシュを用いることで防ぐことが できますが、単一引用符では防ぐことができません。。 二重引用符、逆引用符でクォートされた文字列は、 変数置換とコマンド置換は受けますが、 その他の置換は受けません。
単一引用符、二重引用符で囲まれたテキストは 1 つの単語 (または その一部) となります。 それらの文字列中のメタ文字 (空白、タブを含む) は、単語を分割しません。 ひとつだけ特殊な場合 (次のコマンド置換を参照) として、 二重引用符で囲まれた文字列を 1 つ以上の単語に分けることができます。 これは、単一引用符で囲まれた文字列では決してできません。 逆引用符は特殊で、コマンド置換 (そちらも参照) に、 影響を与え、その結果が 1 つ以上の単語になることもあります。
複雑な文字列をクォートする場合、特に、文字列自身にクォート文字が 含まれている場合は、わかりにくいかもしれません。 人間が書いたものの中では、引用符を引用のために使う必要はないことを 忘れないように! 文字列全体をクォートするのではなく、もし適当ならば異なるタイプの 引用符を用い、クォートする必要のある文字列の一部分のみをクォートする ことの方が、簡単かもしれません。
シェル変数 backslash_quote (そちらも参照) を セットすると、 バックスラッシュが常に `\', `'', `"' をクォートするようにできます。(+) これによって、複雑な引用をする仕事が簡単になるかもしれません。 しかし csh(1) のスクリプトでは、構文エラーの原因になります。
ここで、シェルが入力に対して行うさまざまな変換を、 処理が行われる順に記述します。同時に、処理に関わるデータ構造と、 データ構造に影響を与えるコマンドと変数とにも触れておきます。 字句構造のところで説明する引用により、置換を抑制できることを 覚えておいてください。
端末から入力したコマンドひとつひとつ (イベント) は、ヒストリリストに 保存されます。直前のコマンドは常に保存されます。さらに、保存する コマンド数を、シェル変数 history に設定することができます。 重複するイベントを保存するかどうか、同じイベントの連続をそのまま 保存するかどうかを、シェル変数 histdup に設定することが できます。
保存されたコマンドには、1 から始まる連続した番号が振られ、 タイムスタンプが打たれます。普通イベント番号を用いる必要はありませんが、 シェル変数 prompt の中に `!' を置くことで、現在のイベント番号を プロンプトの一部にすることができます。
実際のところ、シェルは、ヒストリを展開形式と 文字どおり (未展開) の形式とで保存しています。 シェル変数 histlit を設定しておくと、 ヒストリを表示する / ヒストリに保存するコマンドで 文字どおりの形式を用いるようになります。
組み込みコマンド history により、ヒストリリストの表示、 ファイルに保存、ファイルからの読み込み、クリアをいつでも行えます。 シェル変数 savehist と histfile により、 ヒストリリストのログアウト時の自動保存と、ログイン時の自動読み込みを 設定することができます。
ヒストリ置換により、ヒストリリストから単語の列を入力ストリームに 持ち込みます。これにより、前のコマンドの繰り返し、前のコマンドで使った 引数の繰り返し、前のコマンドで間違えたスペルの修正を わずかなキー入力で、かなり確実に 容易に行うことができるようになります。
ヒストリ置換は、文字 `!' で始まります。ヒストリ置換は、 入力ストリームのどこから開始してもかまいませんが、入れ子には できません。 文字 `!' の前に `\' を置くことで、`!' の特殊な意味を打ち消すことが できます。文字 `!' が、空白文字、タブ文字、改行文字、`='、`(' の 前にある場合は、そうした方が便利なので、無変更のまま渡されます。 入力行が `^' で始まる場合にも、ヒストリ置換が生じます。 この省略表現については後で説明します。 ヒストリ置換を示すための文字 (`!' と `^') は、 シェル変数 histchars を設定することにより変更することが できます。入力行がヒストリ置換を含む場合、実行前に置換結果が 常に表示されます。
ヒストリ置換には「イベント指定」、「単語指定子 (word designator)」、 「修飾子 (modifier)」を含めることができます。イベント指定は、 どのイベントから単語の列を取り出すかを指定します。単語指定子は、 選択したイベントからどの単語を選ぶかを指定します。修飾子は、 選択した単語をどう操作するかを指定します。
イベント指定には、次のものがあります。
たとえば、次のようなヒストリリストがあるとします。
コマンドが、イベント番号とタイムスタンプ付きで表示されています。 現在のイベントは、まだ入力していませんが、イベント 13 です。 `!11' と `!-2' は、イベント 11 を指します。`!!' は、直前の イベントであるイベント 12 を指します。`!!' は、後ろに `:' が 付いている場合、`!' と省略することができます (`:' は後で説明します)。`!n' は、`n' から始まっている、 イベント 9 を指します。`!?old?' は、`old' を含んでいる イベント 12 を指します。単語指示子も単語修飾子もどちらも含まない場合、 ヒストリ参照はそのイベント全体を展開するだけです。ですから、 コピーコマンドを再実行したいときは `!cp' と入力しますし、`diff' の 出力が画面上端からスクロールして消えてしまう場合、`!!|more' と 入力します。
必要に応じ、中括弧で囲むことで、ヒストリ置換を前後のテキストから 分離することができます。たとえば、`!vdoc' とすると、`vdoc' で始まる コマンドを探しますが、この例で見つからないにしても、`!{v}doc' では、 あいまいさもなく `vi wumpus.mandoc' に展開されます。 中括弧の中でも、ヒストリ置換は入れ子になりません。
(+) csh(1) では、たとえば `!3d' は、イベント 3 の後ろに 英文字 `d' を付加して展開しますが、tcsh では、これを `3d' で 始まるイベントのうち最新のものに展開します。つまり、完全な数値引数 だけをイベント番号と見なします。これにより、数字から始まるイベントを 呼び出すことが可能となります。`!3d' を csh(1) のように 展開させるには、`!\3d' と指定してください。
イベントから単語を選択する場合、`:' と選択する単語を表す指示子を使い、 イベント指定を行うことができます。入力行の単語には、0 から始まる 番号が振られています。最初の単語 (普通、コマンドです) は 0 で、 2 番目の単語 (第 1 引数) は 1 といった具合です。基本的な単語指示子は 次のようになります。
選択した単語は、空白文字 1 つで区切られてコマンド行に挿入されます。 たとえば、`diff !!:1.old !!:1' と打ち込むことで、先の例の `diff' コマンドを入力することもできます (`:1' で、直前のイベントから 最初の引数を選択しています)。また、`diff !-2:2 !-2:1' と 打ち込むことで `cp' コマンドの引数を選択し、入れ換えることができます。 `diff' コマンドの引数の順番を気にしなければ、`diff !-2:1-2' と 打ち込んでも構いませんし、単に `diff !-2:*' でも構いません。 `cp' コマンドは、現在のイベントを指す `#' を使い、 `cp wumpus.man !#:1.old' と書くことができます。`!n:- hurkle.man' は、 `nroff' コマンドから最初の 2 単語を再利用し、 `nroff -man hurkle.man' とすることになります。
文字 `:' は単語指定からイベント指定を分離しますが、引数選択子が `^', `$', `*', `%', `-' で始まるとき、この文字 `:' は省略可能 です。たとえば、先ほどの `diff' コマンドは `diff !!^.old !!^' もしくは `diff !!$.old !!$' でも構わなかったのです。 しかし、`!!' が `!' に省略可能である場合、`-' で始まる引数選択子は イベント指定として解釈されます。
ヒストリ参照に、イベント指定のない単語指示子があっても構いません。 その場合、直前のコマンドを参照します。 `diff' の例を続けるなら、単純に `diff !^.old !^' と入力することが できます。もしくは、逆順の引数を得るだけならば、単に `diff !*' で いいです。
ヒストリ参照の中の単語は編集可能です。つまり、単語の後ろに 1 つまたは 複数の修飾子 (修飾子それぞれは `:' で始まります) を付けることで 「修飾」可能です。
修飾子は最初に見つかった修飾可能な単語だけに適用されます (`g' を 使用しない限り)。修飾可能な単語がない場合はエラーになります。
たとえば、先の例の `diff' コマンドは、`diff wumpus.man.old !#^:r' とも 書くことができます。これは、`r' を用いて、同じ行 (`!#^') の最初の 引数から `.old' を削除しています。`echo hello out there' と 言っておいてから、`echo !*:u' を使い `hello' を大文字にできます。 `echo !*:au' を使い大声で言うようにできます。`echo !*:agu' を使い 絶叫させることもできます。`mail -s "I forgot my password" rot' の後で `!:s/rot/root' を続けることで、`root' のスペル間違いを直すこと ができます (スペル間違いの訂正については、スペル訂正の項に 別のやり方があります)。
置換には特別な省略記法があります。`^' が入力行の先頭にある場合、 `!:s^' と等価です。よって、先の例でスペルを訂正するには、 ^rot^root と言うこともできたわけです。これは明示的に `!' で 始まらないヒストリ置換としては唯一のものです。
(+) csh では、ヒストリ展開または変数展開に適用される修飾子は 1 つだけです。tcsh では、1 つ以上の修飾子が使用される可能性が あります。たとえば、次のような場合を考えます。
csh では、この結果は `wumpus.1:r' となります。コロンが後ろに続く 置換は、中括弧を用いてコロンと区切る必要があります。
最初の試みは csh では成功しますが、tcsh では失敗します。 この理由は、tcsh は 2 番目のコロンの後ろに、`$' ではなく 修飾子があると思っているからです。
最後に、ヒストリはここで説明してきた置換だけでなく、エディタでも 利用することができます。編集コマンド up-history, down-history, history-search-backward, history-search-forward, i-search-back, i-search-fwd, vi-search-back, vi-search-fwd, copy-prev-word, insert-last-word は ヒストリリスト中のイベントを検索し、入力バッファにイベントを コピーします。編集コマンド toggle-literal-history は、 入力バッファでヒストリ行を展開するか文字どおりに扱うかを切り替えます。 expand-history, expand-line はそれぞれ、現在の単語、 または、入力バッファ全体でヒストリ置換を展開します。
シェルは、エイリアスのリストを保持しています。このリストは、 alias, unalias コマンドを使って設定、削除、表示する ことができます。コマンド行を解釈し単純コマンド (コマンドを参照) に分割したあと、複数のコマンドを左から右へ、それぞれの最初の単語が エイリアスを持っているかをチェックします。エイリアスを持っている 場合、最初の単語をエイリアスで置き換えます。置き換えたエイリアスが ヒストリ参照を含む場合、元のコマンドを直前の入力行とみなして、 ヒストリ置換 (そちらも参照) が適用されます。 エイリアスがヒストリ置換を含まない場合、引数リストは変更されず そのままです。
そのため、たとえば `ls' のエイリアスが `ls -l' だった場合、コマンド `ls /usr' は `ls -l /usr' になります。ここで、引数リストは 影響を受けません。`lookup' のエイリアスが `grep !^ /etc/passwd' だとすると、コマンド `lookup bill' は `grep bill /etc/passwd' に なります。エイリアスを使い、パーザのメタ記法を利用できます。 たとえば、`alias print 'pr \!* | lpr'' は、引数を ラインプリンタに pr(1) する ``コマンド''(`print') を 定義します。
コマンドの最初の単語がエイリアスを持たなくなるまで、エイリアス置換は 繰り返されます。(先の例のように) エイリアス置換が最初の単語を 変更しない場合、そのエイリアスに印を付けてループが生じない ようにします。それ以外のループは検出され、エラー扱いになります。
シェルが参照するエイリアスがいくつかあります。特殊エイリアス を参照してください。
シェルは変数のリストを管理しており、それらは 0 個またはそれ以上の 個数の単語のリストを値として持ちます。シェル変数の値は、コマンド set, unset により表示、変更することができます。システムは、 自分自身の ``環境'' 変数のリストを保持しています。環境変数は コマンド printenv, setenv, unsetenv により表示、 変更することができます。
(+) `set -r' (参照) により変数を読み出し専用にすることが できます。読み出し専用変数は、変更や unset ができません。これを 試みるとエラーになります。一度読み出し専用にした変数は、 書き込み可能に戻すことはできません。ですから、`set -r' は 注意して使用する必要があります。環境変数は読み出し専用に することはできません。
シェルが設定、参照する変数がいくつかあります。たとえば、変数 argv は、シェルの引数リストの複製で、この変数の値である単語は特別な方法で 参照されます。シェルが参照する変数の中には、トグルスイッチがあります。 シェルは、これらの変数が何の値を持っているかではなく、値が設定されて いるかどうかにだけ影響を受けます。たとえば、変数 verbose は、 コマンド入力をエコーするかどうかを制御するトグルスイッチです。 コマンド行オプション -v がこの変数に値を設定します。 シェルが参照する変数すべてのリストは、特別なシェル変数にあります。
変数を数値として扱う操作もあります。コマンド `@' により、 数値計算を実行し、結果を変数に代入することが可能となります。 しかしながら、変数の値は常に (0 個以上の) 文字列として表現されて います。数値として扱うために、空文字列は 0 と見なされます。 複数の単語からなる値の、2 番目以後の単語は無視されます。
入力行のエイリアス処理を終え、字句解析を終えた後で、そして、 各コマンドを実行する前に、`$' 文字をキーとして変数置換が行われます。 この展開は `$' の前に `\' を置くことで抑止できます。ただし、`"' の 中は別で、ここでは常に変数置換が行われます。また、`'' の中も 別で、ここでは決して変数置換が行われません。``' で クォートした文字列は後で解釈されますから、 (後のコマンド置換を参照) そこでの `$' 置換は後になるまで行われません。`$' の後ろが空白、 タブ、改行文字の場合は、`$' 置換は発生しません。
入出力リダイレクトは、変数展開の前に識別され、別々に変数展開されます。 それ以外では、コマンド名と引数リスト全体が一緒に展開されます。ですから、 (この時点での) 最初の単語 (コマンド) から 2 つ以上の単語が生成される 可能性があります。展開後の複数の単語のうち最初のものがコマンド名となり、 残りの単語は引数になります。
`"' で囲まれているか、修飾子 `:q' が指定されている場合を除き、 最終的には、変数置換の結果に対し、コマンド置換とファイル名置換が 適用されます。`"' で囲まれている場合、値が複数の単語で構成される変数は、 1 つの単語 (の一部) に展開されます。 この単語には、その変数の値である単語が空白で区切られたものを 含みます。置換の際に修飾子 `:q' が適用される場合、変数は複数の単語に 展開されます。それぞれの単語は空白で区切られ、以後、コマンド置換と ファイル名置換が適用されないようにクォートされます。
シェルへの入力に変数の値を持ち込むための方法として、以下の構文が あります。特に注がない限り、設定されていない値の参照はエラーになります。
$name
$name[selector]
$number
ヒストリ置換のところで説明した `:' 修飾子 (`:p' を除く) が、 上記の置換に対して適用できます。2 つ以上の修飾子も適用できます。 (+) ヒストリ置換 (そちらも参照) と同様に、 変数置換とリテラルのコロンとを分離するために、中括弧が必要なことが あります。修飾子は中括弧の中に置かねばなりません。
以下の置換は `:' 修飾子で修飾することはできません。
$?name
$#name
$%name
$%number
編集コマンド expand-variables は、 通常は `^X-$' にバインドされていますが、 これを使って、個々の変数を対話的に展開することができます。
組み込みコマンドの引数に対し、残りの置換が選択的に適用されます。 選択的とは、行の中で評価されなかった部分は、これらの展開の対象に ならないという意味です。シェルの内部コマンドでないコマンドに対しては、 コマンド名は引数リストとは別個に置換されます。この置換は最後の方、 入出力リダイレクトを実行したあと、メインシェルの子供の中で生じます。
``' で囲まれたコマンドは、コマンド置換を示します。囲まれたコマンドの 出力を、空白、タブ、改行文字のところで別々の単語に分割します。 この出力に変数置換、コマンド置換を実行し、 元の文字列があった場所に置きます。
ニ重引用符 (`"') の内側のコマンド置換は、空白、タブを保存します。 改行文字だけは新しく単語分けを行います。 ただし、どのような場合でも最後の改行文字だけは新しい単語になりません。 ですから、1 行まるまる出力するようなコマンドでも、コマンド置換を 用いると単語の一部だけを生成することができます。
単語が `*', `?', `[', `{' のいずれかの文字を含む場合、または先頭が `~' で始まる場合、その単語はファイル名置換 (あるいはグロブ (globbing) と 呼ばれます) の候補になります。このような単語をパターン (グロブパターン) と見なし、そのパターンにマッチするファイル名の リストをアルファベット順で整列したもので置き換えます。
ファイル名マッチの際に、ファイル名の先頭、または `/' の直後の 文字 `.' は、`/' と同様に、明示的にマッチさせなければなりません。 文字 `*' は、空文字列を含むどのような文字列にもマッチします。 文字 `?' は、どのような 1 文字にもマッチします。列 `[...]' は、 括弧の中で指定した文字のいずれかにマッチします。`[...]' 内では、 文字の対を `-' でつなぐことで、(文字順序で) その 2 文字の範囲にある 文字のいずれかにマッチします。
(+) グロブパターンの中には反転を指定できるものがあります。 列 `[^...]' は、括弧内の文字 / 範囲で指定していない文字 ちょうど 1 つにマッチします。
`^' により、グロブパターン全体を反転させることもできます。
`?', `*', `[]' のいずれも使わないグロブパターンや、 `{}', `~' (あとで説明します) を使うグロブパターンは、 反転しても正しい結果を得られません。
メタ記法 `a{b,c,d}e' は、`abe ace ade' の省略記法です。左から右への 出現順序は保存されます。`/usr/source/s1/{oldls,ls}.c' は、 `/usr/source/s1/oldls.c /usr/source/s1/ls.c' に展開します。 マッチングの結果は下位のレベルで個別に整列され、出現順序は保存 されます。 `../{memo,*box}' は、`../memo ../box ../mbox' などに 展開されるでしょう (ここで、`memo' が `*box' のマッチング結果とともに 整列されていないことに注意してください)。この指定が展開された結果 ファイルが存在しなくてもエラーになりませんが、展開結果を渡した先の コマンドでエラーになる可能性はあります。この指定は入れ子にすることが できます。特殊な場合として、単語 `{', `}', `{}' は変更されずに そのまま渡されます。
ファイル名先頭の文字 `~' は、ホームディレクトリを指します。単独で 用いられた場合、つまり `~' だけの場合、シェル変数 home の値に 反映されているように、呼び出したユーザの ホームディレクトリに展開されます。`~' の直後に英文字、 数字、または文字 `-' で構成される名前が続く場合、シェルはその 名前を持つユーザを検索し、そのユーザのホームディレクトリに展開します。 ですから、`~ken' はたとえば `/usr/ken' に展開されます。 また、`~ken/chmach'は、たとえば `/usr/ken/chmach' に展開されます。 文字 `~' の後ろに英文字でもなく `/' でもない文字が続いた場合、 もしくは、文字 `~' が単語の先頭以外に現れた場合、変更されずに そのまま渡されます。ですから、 `setenv MANPATH /usr/man:/usr/local/man:~/lib/man' のようなコマンド では、期待通りのホームディレクトリ置換が起こりません。
`*', `?', `[', `~' のどれかを含むグロブパターン (`^' は付いていてもいなくとも同じ) は、マッチするファイルが ひとつもないとエラーになります。 しかし、グロブパターンのリストのうちのひとつでも マッチすれば (他のものはマッチするものがなくても) エラーになりません (したがって、たとえば `rm *.a *.c *.o' は、カレントディレクトリに `.a', `.c', `.o' で終わるファイルがひとつもないときに限って エラーになります)。 また、シェル変数 nonomatch が設定されている場合、 どれにもマッチしないパターン (あるいはパターンの列) は エラーにならずに無変換のまま残されます。
ファイル名置換を止めるために、シェル変数 noglob を設定することが できます。編集コマンド expand-glob は、通常は `^X-*' に結合されて いますが、これを使い、個々のファイル名置換の展開を対話的に 行うことができます。
ディレクトリスタックはディレクトリの列であり、0 から番号付けられ、 組み込みコマンド pushd, popd, dirs (そちらも参照) が使用します。 dirs コマンドを使用すると、ディレクトリスタックを いつでも表示でき、ファイルに書き込むことができ、 ファイルから読み込むことができ、そしてクリアすることが できます。シェル変数 savedirs, dirsfile に 値を設定することで、ログアウト時のディレクトリスタックの書き込みと、 ログイン時の読み込みを自動的に行うことができます。シェル変数 dirstack を使い、ディレクトリスタックの中を調べることができ、 ディレクトリスタックに任意のディレクトリを設定することができます。
文字 `=' の後ろに 1 桁以上の数字が続くと、それは ディレクトリスタック中のエントリに展開されます。特殊な場合として、 `=-' はスタックの最新のディレクトリに展開します。たとえば、 次のようにです。
シェル変数 noglob, nonomatch と編集コマンド expand-glob はファイル名置換と同様に ディレクトリスタックにも適用されます。
ファイル名を含む変換が他にいくつかあります。厳密には先に説明した ものと関係があるわけではありませんが、完全を期するために ここで説明しておきます。変数 symlinks (そちらも参照) が `expand' に設定されている場合、どのようなファイル名も フルパスに展開される可能性があります。クォートすることで この展開を止めることができ、編集コマンド normalize-path を 使用すると要求に応じて展開を止めることができます。また、編集コマンド normalize-command は、PATH にあるコマンドを、 要求に応じてフルパスに展開します。 最後に、cd と pushd は `-' を以前の作業ディレクトリ (シェル変数 owd と等価) と解釈します。これは置換でもなんでも なく、このコマンドだけで認識される省略記法です。それでも、この表記も クォートすることでこの解釈を止めることができます。
次の 3 つのセクションでは、シェルがどのようにコマンドを実行し、 それらの入出力をどのように扱うかを説明します。
単純コマンドは、単語の列であり、 その最初の単語が実行されるコマンドです。 `|' 文字によって区切られた一連の単純コマンドは パイプラインを形成します。 パイプライン内のそれぞれのコマンドの出力は次のコマンドの 入力に接続されます。
単純コマンドとパイプラインは `;' 文字を使って コマンド列に組み入れることができ、並んでいる順に実行されます。 コマンドとパイプラインは `||' や `&&' でコマンド列に 組み込むこともでき、C 言語で扱われるのと同様に、 最初のコマンドが失敗した時にだけ (`||'の場合)、 あるいは成功した時にだけ (`&&'の場合)、次のコマンドが実行されます。
単純コマンド、パイプライン、またはコマンド列は、 括弧 `()' を使って単純コマンドを形成することができ、 パイプラインやコマンド列の一部として使用できます。 コマンド、パイプライン、またはコマンド列の後に `&' を 置いて実行すると、そのコマンドの終了を待たずに 次のコマンドを実行できます。
組み込みコマンドは、シェルの中で実行されます。 パイプラインの構成要素の最後以外が組み込みコマンドのとき、 パイプラインは、サブシェル内で実行されます。
括弧で括られたコマンドは、常にサブシェル内で実行されます。
これは、現在のディレクトリを移動することなくくホーム ディレクトリを表示 (その後に現在のディレクトリを表示) し、 その一方、
この場合はホームディレクトリに移動します。 括弧で括られたコマンドは、たいてい cd が現在のシェルに 影響するのを防ぐために使用します。
実行するコマンドが組み込みコマンドでないことが判明すると、 シェルはそのコマンドを execve(2) を通じて実行しようとします。 環境変数 path 内の各語は、シェルがコマンドを検索する ディレクトリを指定します。 -c, -t オプションのいずれも指定されていない場合、 これらのディレクトリ内の名前を内部テーブルでハッシュし、 そのコマンドが存在する可能性のあるディレクトリだけで execve(2) の実行を試みます。 このことは、検索パス内のディレクトリの数が多い場合に、 コマンドの位置確定を大いに高速化します。 この機構が (unhash によって) オフにされ、 シェルに -c または -t のオプションが与えられるか、 それぞれの path のディレクトリ構成要素のいずれかが `/' で始まっていない場合、シェルは現在の作業ディレクトリと 与えられたコマンド名を結合して実行するファイルのパス名を形成します。
ファイルに実行許可であってシステムが実行可能ではない場合、 (例 : 実行可能バイナリ、インタプリンタを指定したスクリプト ではないとき)、それをシェルコマンドを含むファイルであるとみなし、 新しいシェルを起動してそのファイルを読み込みます。 シェルの特殊なエイリアスで、シェル自体ではなくインタプリタを 指定するように設定することもできます。
慣習的な‘#!' スクリプトインタプリタを理解しないシステム上では、 シェルはそれをエミュレートするようにコンパイルされます ; シェル変数 version を参照してください。 その場合、シェルがファイルの最初の行をチェックし、それが `#!interpreter arg ...' の形式であるかどうかを 確認します。 この形式であれば、シェルは与えられた引数とともに インタプリタを起動して、そのファイルを標準入力に供給します。
コマンドの標準入力と標準出力は以下の文法に従って リダイレクトすることができます:
> name
>! name
>& name
シェル変数 noclobber がセットされている場合、 ファイルが存在しないか文字型特殊ファイル (端末や `/dev/null' のような) でなければ エラーになります。これは、すでに存在するファイルを間違えて 削除してしまうことを防止します。`!' を用いた形式を使うと、 この検査を抑制することができます。
`&' を用いた形式では、標準出力とともに診断メッセージ 出力もファイルへリダイレクトされます。 name は、`<' の 入力ファイル名の場合と同様の展開を受けます。
>> name
>>& name
>>! name
コマンドは、シェルが起動されたときの環境を引き継ぎます。 ただしこの環境は入出力のパラメータによって変更されますし、 コマンドがパイプラインの中にあった場合も変更されます。 したがって、以前のいくつかのシェルとは異なり、シェルの コマンドファイルから起動されたコマンドは、デフォルトでは そのコマンドのテキストへアクセスできません。かわりに それらのコマンドは、シェルのもともとの標準入力をそのまま 受け継ぎます。 シェルスクリプトの内部で、コマンドにあらかじめ決まった (inline) データを渡す場合には、標準入出力の形式ではなく、 `<<' の機構を使うことができます。 このように制限することにより、シェルコマンドスクリプトを パイプラインの一部として用いることができます。 バックグラウンドで実行されているコマンドの標準入力も /dev/null 等にリダイレクトされることなく、 シェルの標準入力をそのまま受け継いでいます。 もし標準入力が端末で、コマンドが端末から読み込もうとした場合、 そのプロセスはブロックされ、シェルはユーザにそのことを通知します (ジョブの項を参照)。
診断メッセージ出力もパイプにリダイレクトすることが できます。単に `|' のかわりに `|&' を使います。
シェルは、標準出力のリダイレクトなしで、診断メッセージ出力を リダイレクトできなくなります。 そのため、`(コマンド > 出力ファイル) >& エラーファイル' は、無難な予備手段としてされてます。 出力ファイル、エラーファイルのどちらかが、 端末に出力を送るための `/dev/tty' です。
ここではシェルがどのようにコマンドラインを受け入れ、 解釈し、実行するかを説明しました。 次は、便利な特徴について説明します。
このシェルには、 コマンドファイル (シェルスクリプト) や (制約はあるものの便利な) 端末からの入力 処理の流れを制御するために使用できる 多くのコマンドを備えています。 これらのコマンドは、 入力の再読み込みや読み飛ばしを行うため シェルを強制的に操作します。 これらの実装のために、幾つかのコマンドには制限があります。
foreach、switch、while 文は、 if 文の if-then-else 形式と同様に、 後で示すように入力行の単独の単純コマンド中に 主要なキーワードが現れることを要求します。
シェルの入力がシーク可能でない場合は、 ループが読み込まれると常に入力をバッファし、 この内部バッファをシークすることでループによる 再読み込みを可能にします。 (これを許可した結果、 後方へ向かう goto がシーク可能でない入力についても 成功することになります。)
組み込みコマンドの if, while, exit は 共通した文法を持った式を使います。 式には、次の 3 つのセクションの中で説明される 任意の演算子を含めることができます。 @ 組み込みコマンド (そちらも参照) 自体は、 文法を区切るので注意してください。
これらの演算子は C の演算子と 同じ優先順位となっています。 演算子には、次のものがあります。
ここに挙げた演算子は右側のものほど優先順位が高くなっています。 ただし、`==' `!=' `=~' `!~' の 4 つ、`<=' `>=' `<' `>' の 4 つ、 `<<' `>>' の 2 つ、`+' `-' の 2 つ、`*' `/' `%' の 3 つは それぞれ同一のグループに所属しており、同じグループに所属している 演算子の優先順位は同じレベルとなっています。 演算子 `==' `!=' `=~' `!~' は引数を文字列として比較します。 他の演算子はすべて数値で比較します。 演算子 `=~' `!~' は `!=' `==' と似ていますが、 左側のオペランドにマッチするグロブパターン (ファイル名置換を参照) を右側に置くことが異なります。 必要なものに対してだけパターンマッチを行うので、 シェルスクリプト中における switch 組み込みコマンドの使用の必要を減らします。
`0' で始まる文字列は 8 進数とみなされます。 空の文字列や引数がぬけているものは `0' とみなされます。 すべての式の結果は 10 進数で表される文字列になります。 特に、式の構成要素が同一の単語中に複数個現れることはないと いうことに注意してください。 例外として、パーサに文法的に特別な意味を持つ式の構成要素 (`&' `|' `<' `>' `(' `)') が隣りにくることは構いません。 ただし、これらは空白で区切られるべきです。
式の中でコマンドを実行することができ、 式を中括弧 (`{}') で囲むと 終了ステータスが返されます。 中括弧は、コマンドの単語から空白で区切ることを 忘れないでください。 コマンドの実行が成功した場合は、 真 (たとえば `1') を返します。 コマンドが 0 のステータスで終了した場合、 または実行に失敗した場合は、偽 (たとえば `0') を返します。 もっと詳しいステータスの情報が必要な場合は、 コマンドを式の外部で実行し、 シェル変数 status を調べてください。
これらの演算子のうち幾つかは ファイルと関連するオブジェクトについて 真/偽の判定を行います。 これらは -op file の形式です。 op は次のうちのどれか 1 つです。
file はコマンドと展開されたファイル名で、 指定された実ユーザに対する関係があるかどうか テストします。 file が存在していない場合、 もしくはアクセスできない場合、 `*' で示した演算子については、 指定のファイルタイプが現在のシステムに 存在していなければ すべての問い合わせは偽 (たとえば `0') を返します。
s true これらの演算子は、簡潔にするために連結することができます。 `-xy file' は `-x file && -y file' と等価です。(+) たとえば `-fx' は 通常の実行可能ファイルに対しては真 (`1' を返す) ですが、 ディレクトリに対してはそうではありません。
s L は多重演算子の中で使用できます。 この演算子の後にくる演算子は、 シンボリックリンクが指されているファイルではなく、 シンボリックリンクそのものに適用されます。 たとえば `-lLo' は 呼び出しユーザが所有しているリンクに対しては真です。 Lr, Lw, Lx は リンクに対しては常に真で、 リンクでないものに対しては偽です。 L は 多重演算子の中で最後の演算子になった場合、 異なった意味を持ちます。 以下を参照してください。
s file に渡すべき演算子と、そうでない演算子 (たとえば X と t) を連結することは可能ですが、 実用的ではなく、しばしば間違いの元になります。 特に、ファイルでない演算子に L をつけると、 妙な結果になります。
他の演算子は他の情報、つまり単なる `0' や `1' だけ ではない情報を返します。(+) これらは前に示したのと同じ書式になります。 op は次のうちのどれか 1 つです。
これらの演算子のうち 1 つだけ多重演算子の中に 現れることを許されていますが、必ず最後につける必要があります。 ただし、L は多重演算子の中の 最後とそれ以外の箇所では違った意味になるので注意してください。 なぜなら、`0' はこれらの演算子の多くにとって正当な返り値のためです。 これらが失敗した場合、`0' を返しません。 たいていの場合、`-1' を返し、F は `:' を返します。
このシェルが POSIX を定義してコンパイルされている (シェル変数 version を参照) 場合、ファイル問い合わせの結果は、 access(2) システムコールの結果に基づいたものではなく、 ファイルの許可ビットに基づいたものになります。 たとえば、 通常は書き込み可であるが 読み取り専用でマウントされたファイルシステム上にある ファイルを -w で検査した場合、 POSIX シェルでは成功し、 非 POSIX シェルでは失敗することになります。
ファイル問い合わせ演算子は filetest 組み込みコマンド (そちらも参照) と等価になり得ます。(+)
シェルはパイプラインの各々に対しジョブを 1 つずつ関連付けます。 シェルは、現在実行中のジョブの一覧表を保持しており、 これは、jobs コマンドによって表示することができます。 ジョブには整数の番号が割り当てられます。 ジョブが `&' を用いて非同期に起動された場合、 シェルは以下のような出力を行います:
これは、非同期に起動したジョブがジョブ番号 1 であり、 プロセス ID が 1234 である (トップレベルの) プロセスを 1 つ持っていることを示します。
もし、あるジョブを実行中に他のことをしたくなった場合、サスペンドキー (通常 ^Z) を押すことにより実行中のジョブに STOP シグナルを送信することができます。 通常、シェルはそのジョブが一時停止した (Suspended) ことを出力し、 プロンプトを表示します。 シェル変数の listjobs が設定されていると、 組み込みコマンドの jobs のようにすべてのジョブがリストされます。 もしそれが `long' と設定されているとリストは `jobs -l' のような 長い形式になります。 ここで、一時停止したジョブの状態を操作することができます。 つまり、bg コマンドにより停止したプロセスを ``バックグラウンド'' で走行させたり、他のコマンドを実行してから、 停止していたジョブを fg コマンドにより ``フォアグラウンド'' で再実行させることなどができます。 (編集コマンドの run-fg-editor も参照してください。) `^Z' は即座に効力を発揮し、割り込みと同様に、それまで待たされていた 出力とまだ読み込まれていない入力は捨てられます。 組み込みコマンドの wait はすべてのバックグラウンドのジョブが 終了するまでシェルを待機状態にさせます。
`^]' キーは遅延サスペンドシグナルを現在のジョブに送信します。 この場合はプログラムが read(2) によって読み込もうとした時点で STOP シグナルが送信されます。 これは、実行中のジョブに対していくつかの入力を先に入力しておき、 先行入力を読み終えた時点でジョブを停止させたいときに便利です。 csh(1) ではこの機能は `^Y' キーに割り当てられていました。 tcsh では `^Y' は編集コマンドです。(+)
バックグラウンドで実行しているジョブが端末からの入力を試みた場合、 そのジョブは停止します。通常、バックグラウンドジョブが端末に 出力することは可能ですが、これはコマンド `stty tostop' により 禁止することができます。もしこの tty オプションを指定したなら、 バックグラウンドで実行しているジョブは、端末から入力を試みたときと 同様に、端末に出力を試みたときに停止します。
シェルでジョブを参照するにはいくつかの方法があります。文字 `%' は ジョブ名を表すのに用いられます。番号 1 のジョブを参照する場合は `%1' とします。単にジョブ名を入力した場合、そのジョブは フォアグラウンドに移動されます。すなわち `%1' は `fg %1' と等価で、 ジョブ 1 をフォアグラウンドに移行します。同様に `%1 &' は、 ちょうど `bg %1' と同じようにのジョブ 1 をバックグラウンドで 再開させます。ジョブはそのジョブを起動したときにタイプされた文字列の 先頭部分によって参照することもできます。ただしこの先頭部分は あいまいでない必要があります。すなわち `%ex' は、`ex' という文字列で 始まる名前のサスペンドされたジョブが 1 つしかない場合に限り、 サスペンドされた ex(1) のジョブを再開します。 文字列 string を含むジョブが 1 つしかない場合、`%?string' と 入力することでそれを指定することもできます。
シェルは現在のジョブと直前のジョブを覚えています。 ジョブに関係する出力で、`+' 記号が付加されているのが現在のジョブ、 `-' 記号が付加されているのが直前のジョブです。 `%+', `%' と (ヒストリ機構の文法との類似から) `%%' は すべて現在のジョブ、`%-' は直前のジョブを参照するための省略形です。
ある種のシステムではジョブ制御機構を利用するために stty(1) の オプション `new' を設定しておく必要があります。 ジョブ制御機構は `新型の' 端末ドライバの実装の上に構築されているからで、 新型の端末ドライバによりジョブを停止させるための割り込み文字を キーボードから入力できるようになるからです。 新型の端末ドライバのオプション設定については stty(1) と 組み込みコマンドの setty を参照してください。
シェルは、プロセスが状態の変化を起こすとすぐにそれを検知します。 通常はプロンプトが表示される直前にのみ、あるジョブが停止して それ以上処理が進まなくなったことを通知します。これはユーザの仕事を 邪魔しないようにするためです。しかしながら、シェル変数 notify を 設定することにより、シェルにバックグラウンドジョブの状態が 変化したことをただちに通知させることができます。また、 シェルコマンド notify により、特定のジョブの状態の変化をただちに 通知させるようにマークすることもできます。引数なしの notify は 現在のプロセスに対してマークをつけます。バックグラウンドジョブの 開始直後に単に `notify' と打つとそのジョブをマークします。
停止したジョブが存在する状態でシェルを終了しようとすると `You have stopped jobs.' という警告を受けます。このとき jobs コマンドによりどのジョブが停止中であるのかを 確認することができます。警告を受けた直後に jobs コマンドで 確認した場合と、警告を受けた直後に再度シェルを終了させようとした 場合には、シェルは 2 度目の警告を行わずに停止中のジョブを 終了させてからシェルを終了します。
シェルの ``ライフサイクル'' において、いろいろな時間に自動的に コマンドの実行と他のアクションを行うさまざまな方法が用意されています。 それらをここに要約し、詳しくは 組み込みコマンド、特別なシェル変数、特別なエイリアスの 適切な場所で説明します。
組み込みコマンドの sched はコマンドをイベントの予定表に置き、 指定された時刻にシェルによって実行されるようにします。
特別なエイリアスとして beepcmd, cwdcmd, periodic, precmd, postcmd, jobcmd があり、それぞれ シェルがベルを鳴らす時、作業ディレクトリが変わる時、 tperiod 分毎、各プロンプトの前、各コマンドの実行前、 各コマンドの実行後、ジョブの起動時またはフォアグラウンド移行時に 実行させたいコマンドを設定できます。
シェル変数の autologout を使って、指定した分数の休止後に ログアウトまたはシェルをロックするように設定できます。
シェル変数の mail を使って、定期的に新しいメールを チェックするように設定できます。
シェル変数の printexitvalue を使って、0 以外のステータスで 終了したコマンドの終了ステータスを表示するように指定できます。
シェル変数の rmstar を使って、`rm *' が入力されたときに ユーザに間違いないかどうか確認を求めるように指定できます。
シェル変数の time を使って、指定した秒数より多く CPU 時間を 使ったプロセスの終了後に組み込みコマンドの time を実行するように 設定できます。
シェル変数の watch と who を使って、指定したユーザが ログインまたはログアウトした時にレポートするように設定できます。 また組み込みコマンドの log でいつでもそれらのユーザに ついてのレポートを得られます。
シェルは 8 ビットクリーンなので (そのようにコンパイルされていれば。シェル変数の version を 参照)、それを必要とする文字セットをサポートします。 NLS サポートはシェルがシステムの NLS を使うようにコンパイルされているか どうかによって異なります (再び、version を参照)。 どちらの場合でも 7 ビット ASCII がデフォルトの文字分類 (たとえばそれらの文字は表示可能) であり、そして順序づけです。 環境変数の LANG または LC_CTYPE を変更すると、 これらの点について変化の有無がチェックされます。
システムの NLS を使う場合には、文字の適切な分類と順序づけを決定するために setlocale(3) 関数が呼び出されます。この関数は典型的には 環境変数の LANG と LC_CTYPE を調べます。 より詳細についてはシステムのドキュメントを参照してください。 システムの NLS を使わない場合には、シェルは ISO 8859-1 文字セットが 使われていると仮定することでシミュレートします。 変数 LANG と LC_CTYPE のいずれかが設定されていても、 それらの値を無視します。 シミュレートされた NLS では順序づけに影響しません。
加えて、本物とシミュレートされた NLS の両方で、\200-\377 の範囲、 つまり M-char でバインドされているすべての表示可能文字は、 自動的に self-insert-command に再バインドされます。 対応する escape-char へのバインドは、もしあればそのまま残ります。 これらの文字は環境変数の NOREBIND が設定されていれば 再バインドされません。この機能はシミュレートされた NLS や すべてが ISO 8859-1 であると仮定した原始的な本物の NLS で有効でしょう。 そうでなければ、\240-\377 の範囲の M-char へのバインドは 事実上解除されます。この場合でも、もちろん bindkey で明示的に 関連するキーに再バインドする事は可能です。
未知の文字 (つまり表示可能でも制御文字でもないような文字) は \nnn のような形式で表示されます。tty が 8 ビットモードになっていない 場合は、ASCII に変換して強調表示モードを使うことで別の 8 ビット文字が 表示されます。シェルは tty の 7/8 ビットモードを変更することはなく、 ユーザによる 7/8 ビットモードの変更に従います。NLS 利用者 (または メタキーを利用したい利用者) は、たとえば ~/.login ファイルで 適切に stty(1) コマンドを呼び出すことで、 明示的に tty を 8 ビットモードに設定する必要があるかもしれません。
個々のオペレーティングシステムで提供されている機能をサポートするために、 多くの新しい組み込みコマンドが提供されています。すべて 組み込みコマンドセクションで詳細に説明されています。
TCF をサポートするシステム (aix-ibm370, aix-ps2) では、 getspath と setspath でシステム実行パスを取得、設定し、 getxvers と setxvers で試験バージョンプリフィックスを取得、 設定して、migrate でプロセスをサイト間で移動させます。 組み込みコマンドの jobs は各ジョブが実行されているサイトを表示します。
Domain/OS では、inlib で共有ライブラリを現環境に追加し、 rootnode で rootnode を変更し、ver で systype を変更します。
Mach では、setpath が Mach の setpath(1) と等価です。
Masscomp/RTU と Harris CX/UX では、universe で universe を設定します。
Harris CX/UX では、ucb か att によって指定した universe で コマンドを走らせます。
Convex/OS では、warp で universe を表示または設定します。
環境変数の VENDOR, OSTYPE, MACHTYPE は、 シェルが自身が実行されていると考えているシステムの、それぞれ ベンダー、オペレーティングシステム、マシンタイプ (マイクロプロセッサのクラスまたはマシンのモデル) を表示します。 これはいろいろなタイプのマシン間でホームディレクトリを共有する場合に 特に便利です。利用者はたとえば各自の ~/.login 中で
とし、各マシン用にコンパイルされた実行形式を適切なディレクトリに 置くことができます。
シェル変数の version は、どのオプションを選択して シェルがコンパイルされたかを表示します。
組み込みの newgrp、シェル変数の afsuser と echo_style、そしてシステムに依存するシェルの入力ファイル (ファイルを参照) の位置にも注意してください。
ログインシェルは ~/.logout ファイルを読んでいる間は 割り込みを無視します。 シェルは起動時に -q の指定が無ければ QUIT シグナルを無視します。 ログインシェルは TERM シグナルを捕捉しますが、非ログインシェルは TERM シグナルへの挙動を親から継承します。 他のシグナルについては親からシェルに継承された値を持っています。
シェルスクリプトでは、シェルの INT と TERM シグナルの扱いを onintr で制御できます。そして HUP の扱いを hup と nohup で制御できます。
シェルは HUP で終了します (シェル変数の logout も参照)。 デフォルトでは、シェルの子供たちもそうしますが、シェルは終了時に HUP を子供たちに送りません。hup はシェルが終了時に 子供に HUP を送るようにし、nohup は子供が HUP を無視するように 設定します。
シェルは 3 つの異なる端末 (``tty'') モードの設定を使います。それらは 編集時に使う `edit'、文字リテラルをクォートする場合に使う `quote'、 コマンド実行時に使う `execute' です。 シェルは各モードでいくつかの設定を一定に保つので、 tty を混乱状態にして終了するコマンドがシェルに干渉することはありません。 シェルは tty のスピードとパディングの変更にも対応します。 一定に保たれる tty モードのリストは組み込みの setty で 取得、設定できます。エディタは CBREAK モード (または同等のモード) を 使いますが、先行入力された文字はいつでも受け付けられます。
echotc, settc, telltc コマンドを使って、 コマンドラインから端末のケーパビリティを操作、デバッグすることができます。
SIGWINCH か SIGWINDOW をサポートするシステムでは、シェルは ウィンドウのリサイズに自動的に適応して、環境変数の LINES と COLUMNS が設定されていれば値を補正します。 環境変数の TERMCAP が li# と co# のフィールドを含んでいると、 シェルは新しいウィンドウサイズを反映するようにそれらを補正します。
このマニュアルの以下のセクションでは使用可能なすべての 組み込みコマンド、特別なエイリアス、 特別なシェル変数について説明します。
@
@ name = expr
@ name[index] = expr
@ name++|--
2 番目の書式は、name に値 expr を設定します。 3 番目の書式は、値 expr を name の index 番目の要素に 定義します。 name とその index 番目の要素の両方が既に存在していなければ なりません。
expr は C と同様に、`*', `+'のような演算子を含むことがあります。 もし expr が `<', `>', `&', `' を含むのであれば、少なくとも expr のその部分は `()' の中に書かれる必要があります。 expr の書式は、以下の Expressions で説明されるものとは 一切関係がないことに注意してください。
4 番目、5 番目の書式は name またはその index 番目の要素を インクリメント (`++') またはデクリメント (`--') します。
`@' と name の間の空白は必須です。name と `=' の間、また `=' と expr の間の空白はオプションです。expr の要素は空白によって 区切られていなければなりません。
bindkey [-l|-d|-e|-v|-u]
(+)
bindkey [-a] [-b] [-k] [-r] [--]
key (+)
key は 1 文字であっても、文字列であっても構いません。 もしコマンドが文字列にバインドされているならば、文字列の最初の 文字は sequence-lead-in にバインドされ、文字列全体が コマンドにバインドされます。
key に含まれるコントロール文字はコントロール文字そのもの (通常 `^V' にバインドされているエディタの quoted-insert コマンドで入力できるもの) であっても、`^A' のような キャレット-文字形式であっても構いません。削除文字は `^?' (キャレット-疑問符) のように表します。key と command は下に示す、バックスラッシュで始まる エスケープシーケンスを含むことができます (System V の echo(1) で用いられる形式です)。
`\' は後に続く文字に特別な意味があればそれを無効にします。 特に `\' や `^' の場合です。
-p を付けると、dirs と同じように最終的な ディレクトリスタックの内容を表示します。cd の -l, -n, -v フラグは dirs のそれと同じ意味を持ち、 -p の動作を含んでいます (+)。
シェル変数 implicitcd についても参照してください。
command はコマンドのフルネームでも、何らかのパターンでも 構いません (ファイル名置換を参照)。 補完候補がひとつでないことを示すために、`-' ではじめることができます。
word は現在の語の補完にどの単語が関係するのかを指定する もので、以下のうちどれか 1 つです。
list は以下のリストの中から可能な補完のリストを示します。
select は glob パターンです (省略可能)。 これを指定すると、list にある単語のうち select にマッチするものだけが対象となり、 シェル変数 fignore は無視されます。 最後の 3 つの補完形式には select パターンを与えることはできません。 また x は list-choices 編集コマンドが用いられた時には select を説明メッセージとして扱います。
suffix は単一の文字で、補完が成功するとそのあとに追加されます。 空の場合は何も追加されません。省略されると (この場合 4 番目のデリミタも省略できます) ディレクトリにはスラッシュ文字が、 その他の文字にはスペース文字が追加されます。
ではいくつか例を示します。 コマンドによっては、ディレクトリのみを引数として取るものがあります。 (そのようなコマンドに対して) 通常ファイルを補完することは、的外れです。
`cd' に続く最初の単語のみ (`p/1') をディレクトリで補完します。 コマンド補完を絞りこむために p-形式の補完を用いることもできます。 `cd' に続く最初の単語のみ (`p/1') をディレクトリで補完します。
これは `co' で始まる (すなわち `co*' にマッチする) コマンド (位置 0 にある単語 `p/0') を補完して、 `compress' (リストにある唯一の単語) を与えたものです。 先頭にある `-' は、 この補完がコマンドを確定できない場合にのみ用いられることを意味します。
これは n-形式の補完の例です。 `find' の後で、かつ `-user' の直後にある単語を、 ユーザーのリストで補完します。
c-形式の補完の例です。`cc' の後にあり、 かつ `-I' ではじまる単語をディレクトリで補完します。 ここでは小文字の c を用いているので、 `-I' はディレクトリの一部とはみなされません。
コマンドに応じて、便利な list も異なります。
これらでは、 `alias' に続く単語をエイリアスで、 `man' に続く単語をコマンドで、 `set' に続く単語をシェル変数で置き換えています。 `true' はオプションを取らないので、 補完が試みられたときに何も行わず、 補完リストの選択画面には `Truth has no options.' を表示する x を指定しています。
man の例や、以下に示すいくつかの例では、 `p/*' の代わりに `c/*' や `n/*' を用いることもできます。
単語の補完を変数で行うこともできます。これらの変数は補完の際に評価されます。
また補完の際にコマンドを実行し、そこから補完を行うこともできます。
complete コマンド自身は、その引数をクォートしません。 したがって `{print $1}' にある括弧、スペース、`$' は 明示的にクォートしなければなりません。
1 つのコマンドに複数の補完を指定することもできます。
これは `dbx' の第 2 引数を `core' という単語で補完し、 他のすべての引数をコマンドで補完します。 位置指定タイプの補完は、逐次補完より前に指定することに注意してください。 補完は左から右に評価されるので、 (常にマッチする) 逐次補完が先に指定されていると、 位置指定補完は決して行われなくなってしまいます。 これは補完定義の際によくやるミスなので注意してください。
select パターンは、 コマンドが特定の形式を持ったファイルだけを引数にとるような場合に便利です。 以下に例を示します。
これは `cc' の引数を、`.c', `.a', `.o' で終わるファイルだけから補完します。 以下のファイル名置換で述べるようなやり方で グロブパターンの否定を指定すれば、 select で特定のファイルを排除することもできます。
これは大事なソースコードを `rm' の補完に現れないようにします。 もちろんこの排除された名前を手で打ったり、 complete-word-raw や list-choices-raw などの編集コマンドを用いて補完の仕組みを変更することもできます (それぞれ該当の部分を参照)。
`C', `D', `F', `T' 各リストは、 それぞれ `c', `d', `f', `t' と似ていますが、 select の引数の解釈の仕方が異なり、 補完対象のファイルを前置パス名が特定のものに限ります。 たとえば、メールプログラム Elm は `=' を ユーザのメールディレクトリの省略名として用います。 この場合 `elm -f =' を `elm -f ~/Mail/' であるかのように補完するには
とすべきです。ここでは `/' の代わりに `@' を用い、 select 引数を見やすくしています。 またホームディレクトリの置換は単語の先頭でのみ動作するので、 `~' の代わりに `$HOME' を用いています。
suffix は標準では用意されていないサフィックス (スペースやディレクトリに対する `/' 以外) を単語補完用に追加するために用います。
これは `finger' の引数を、まずユーザのリストから補完し、 それに `@' を追加し、さらに `@' の後を変数 `hostnames' のリストから 補完します。ここでも補完指定の順序に注意してください。
最後に、示唆に富む複雑な例を示しましょう。
これは `-name', `-newer', `-cpio', `ncpio' に続く単語を ファイルで補完し (最後の両者にマッチするパターンに注意)、 `-exec', `-ok' に続く単語をコマンドで補完し、 `user' の後をユーザ名で、`group' の後をグループ名で補完し、 `-fstype' と `-type' の後をそれぞれに与えたリストのメンバーで補完します。 また find に与えるスイッチ達も与えたリストから補完し (c-型の補完を用いていることに注意)、 それ以外のものすべてをディレクトリで補完します。ふぅ。
補完指定は、対象となる単語がチルダ置換 (`~' ではじまる) や 変数 (`$' ではじまる) の場合は無視されることに留意してください。 complete は実験的な機能であり、 文法はこのシェルの将来のバージョンでは変更されるかもしれません。 組み込みコマンド uncomplete の説明も見てください。
dirs [-l] [-n|-v]
dirs -S|-L [filename] (+)
-S を指定した 2 番目の形式では、 ディレクトリスタックを cd と pushd からなるコマンド列として filename に保存します。 -L を指定すると、このシェルは filename を source します。 このファイルは、以前に -S オプションや savedirs 機構で保存されたディレクトリスタックです。 いずれの場合でも、 filename が与えられなければ dirsfile を用います。 dirsfile も指定されていなければ ~/.cshdirs を用います。
ログインシェルは `dirs -L' と同様のことを起動時に行っており、 また savedirs が設定されていれば終了前に `dirs -S' と同様のことを行います。 通常 ~/.tcshrc だけが ~/.cshdirs の前に source されるので、 dirsfile は ~/.login ではなく ~/.tcshrc で設定すべきです。
最後の形式はディレクトリスタックをクリアします。
arg が `baud', `cols', `lines', `meta', `tabs' の いずれかであった場合は、その機能の値を表示します ("yes" または "no" は、端末がその機能を持っているかいないかを示します)。 遅い端末でシェルスクリプトの出力をより寡黙にしたり、 コマンドの出力をスクリーンの行数に制限したりするような場合には、 以下のコマンドを使うと良いでしょう。
termcap 文字列はワイルドカードを含むことができますが、 これは正しく echo されません。 シェル変数に端末機能文字列を設定するときには、 以下の例のようにダブルクォートを用いてください。 この例では日付をステータス行に表示しています。
-s を指定すると、存在しない機能を指定したとき、 エラーをおこさずに空文字列を返します。 -v を指定するとメッセージが冗長になります。
else
end
endif
foreach name (wordlist)
...
history [-hTr] [n]
history -S|-L|-M [filename] (+)
2 番目の形式で -S を指定すると、履歴リストを filename に保存します。シェル変数 savehist の最初の単語が 数値に設定されていると、最大でその数値までの行数が保存されます。 savehist の 2 番目の単語が `merge' だった場合には、 履歴リストが現存の履歴ファイルにマージされ、タイムスタンプ順にソートされます (デフォルトでは現存のファイルを置き換えます)。 (+) マージは X Window System のように、 複数のシェルを同時に用いるような場合向けのものです。 現在は、シェルが行儀良く順々に終了するような場合でないと、 マージは成功しません。
-L を指定すると、シェルは filename を 履歴リストに追加します。filename は以前に -S オプションや savehist 機構で保存された履歴リストファイルです。 -M は -L と似ていますが、 filename の内容は履歴リストにマージされ、 タイムスタンプの順にソートされます。 いずれの場合でも、filename が与えられなければ histfile を用い、 histfile も設定されていなければ ~/.history を用います。 `history -L' はほとんど `source -h' と同じですが、 前者ではファイル名を省略できます。
ログインシェルは `history -L' と同様のことを起動時に行っており、 また savehist が設定されていれば終了前に `history -S' と同様のことを行います。 通常 ~/.tcshrc だけが ~/.history の前に source されるので、 histfile は ~/.login ではなく ~/.tcshrc で設定すべきです。
histlit が設定されていると、 最初の形式と 2 番目の形式は履歴リストを 文字通りの (展開されない) かたちで表示、保存します。
最後の形式は履歴リストをクリアします。
if (expr) then
...
else if (expr2) then
...
else
...
現在制御できる資源は、 cputime (プロセスひとつにつき利用できる cpu 秒)、 filesize (作成できる単一ファイルの最大サイズ)、 datasize (プログラムテキストの終端を越えて sbrk(2) で増やせる データ領域+スタック領域の最大サイズ)、 stacksize (自動的に拡張されるスタック領域の最大サイズ)、 coredumpsize (生成されるコアダンプの最大サイズ)、 memoryuse (プロセスひとつにいちどきに割り当てることのできる物理メモリの最大サイズ)、 です。
maximum-use は浮動小数点値または整数値に、 単位をつけて指定します。 cputime 以外の制限値は、`k' または `kilobytes' (1024 バイト) をデフォルトの単位としています。 単位として `m' または `megabytes' を用いることもできます。 cputime のデフォルトの単位は `seconds' です。 分を表す `m', 時間を表す `h', 分 + 秒を表す `mm:ss' の形式などを用いることもできます。
resource も単位も、他と区別がつく範囲で後半部を省略可能です。
シェル変数 listlinks がセットされている場合は、 シンボリックリンクに関してより詳しく表示されます (もちろん、シンボリックリンクを持つシステムでだけです)。
listlinks はシンボリックリンクの指し示すファイルが 存在するパーティションのマウントを引き起こすため、ls-F を 遅くしてしまいます。
もしシェル変数 listfrags が `x', `a', `A' のいずれかに セットされているか、それらの組合せ (たとえば `xA') に セットされている場合は、これが `ls -xF' や `ls -Fa'、 もしくは組み合わせて `ls -FxA' のように ls-F の フラグとして使われます。`ls -C' がデフォルトでないマシンでは listflags が `x' を含む場合には ls -xF' のように、 そうでなければ ls -F は `ls -CF' のように振舞います。 ls -F は、何らかのスイッチが与えられた場合には ls(1) に引数を渡すので、`alias ls ls-F' は通常、正しく動作します。
組み込みの ls-F はファイルタイプや拡張子によってファイル名を 色分けすることができます。シェル変数 color tcsh と 環境変数 LS_COLORS を参照してください。
migrate [-site] pid|%jobid ... (+)
2 番目の形式は `migrate -site $$' と同じ意味を持ちます。 これは現在のプロセスを指定した場所に移動します。シェルは その tty を失わないことになっているので、シェル自身を移動することは 予期しない動作の原因となります。(TCF のみ)
sched (+)
sched [+]hh:mm command (+)
は、午前 11 時に `It's eleven o'clock.' を表示させます。 時間は 12 時間制の AM/PM を指定する書式でも構いません。
また、現在時刻からの相対的な時間でも構いません。
相対的な指定では AM/PM を使うべきではありません。 3 番目の書式では n 番のイベントをリストから削除します。
予定イベントのリストにあるコマンドは、コマンドがリストに 入れられてから最初のプロンプトが出たあとで実行されます。 実行の正確な時間を過ぎてしまうことはありますが、 次のプロンプトでは遅れたコマンドが実行されます。 シェルがユーザのコマンド入力を待っている間に実行予定時間が来た コマンドは直ちに実行されます。しかし、既に実行されているコマンドの 実行に割り込むことはできませんし、 予定されていたコマンドの実行についても同様です。
この仕組みはいくつかの Unix システムに実装されている at(1) に 似ていますが同じではありません。 指定した時刻通りにコマンドが実行できないことがあるのは非常に大きな 短所です。しかしこの仕組みの長所は、sched はシェルから 直接実行でき、シェル変数やその他の資源へのアクセスが できるということです。これは時刻によってユーザの作業環境を 変化させることを可能にします。
set
set name ...
set name=word ...
set [-r] [-f|-l] name=(wordlist) ... (+)
set name[index]=word ...
set -r (+)
set -r name ... (+)
switch (string)
case str1:
...
default:
while (expr)
...
これらのエイリアスは、設定されている場合それぞれ指示された時刻に 自動的に実行されます。これらのエイリアスは、初期状態ではすべて 未定義です。
を実行すると、シェルは、動作中の xterm(1) のタイトルを ホスト名、コロン、そしてカレント作業ディレクトリのフルパスに 変更します。 これをもっと面白く実行するには、次のようにします。
こうすると、ホスト名および作業ディレクトリはタイトルバーに 変更されますが、アイコンマネージャのメニューにはホスト名しか 表示されなくなります。
cwdcmd 中に cd, pushd あるいは popd を置くと、 無限ループを引き起こす可能性があることに注意してください。 そういうことをする人は、そうしてしまった代償は受けるものだというのが 作者の見解です。
として vi foo.c を実行すると、 コマンド文字列が xterm タイトルバーに表示されます。
とすると、GNU のヘルプ呼び出し方法を使った、 コマンドそのもののヘルプ表示が実行されます。 現在のところ、たくさんのコマンドを書いたテーブルを使う以外には、 いろいろな呼び出し方法 (たとえば、Unix の `-h' オプション)を 使い分ける簡単な方法はありません。
とすると、30 分おきに checknews(1) プログラムが起動します。 periodic が設定されているが、tperiod が設定されていないか あるいは 0 に設定されている場合、periodic は precmd のように振る舞います。
とすると、各コマンド用にシェルプロンプトが表示される直前に date(1) が起動します。 precmd に何を設定できるかには制限はありませんが、 慎重に選んでください。
とすると、vi foo.c を実行すると xterm のタイトルバーに このコマンド文字列が書かれます。
このセクションで述べる変数は、シェルにとっては特別な意味のあるものです。
シェルは、起動時に次の変数を設定します。addsuffix, argv, autologout, command, echo_style, edit, gid, group, home, loginsh, oid, path, prompt, prompt2, prompt3, shell, shlvl, tcsh, term, tty, uid, user そして version です。 これらの変数は、起動後はユーザが変更しない限り変更されません。 シェルは、必要があれば、cwd, dirstack, owd および status を更新し、ログアウト時に logout を設定します。
シェルは、シェル変数 afsuser, group, home, path, shlvl, term および user と同名の 環境変数との同期を取ります。 つまり、環境変数が変更されると、シェルは対応するシェル変数を合致するように 変更するのです (シェル変数が読み込み専用でない場合です)。また、その逆も 行います。ここで、cwd と PWD は同じ意味を持ちますが、 この方法では同期は行われないということに注意してください。 また、シェルは、自動的に path と PATH の違った形式を 相互変換するということにも注意してください。
テーブルにはちょうど
256 バイト必要です。 256
文字それぞれは、ASCII
コード 0x00, 0x01, ... 0xff に
(左から右に向かって)
対応しています。
各キャラクタは、
数値 0, 1, 2, 3
に設定されます。各数字には次のような意味があります:
0 ...
マルチバイト文字に対しては使われません。
1 ...
マルチバイト文字の最初の
1
バイトに対して使われます。
2 ...
マルチバイト文字の 2
バイト目に対して使われます。
3 ...
マルチバイト文字の 1,
2
バイト両方に対して使われます。
使用例:
`001322'
に設定した場合、最初の文字
(すなわち、ASCII
コードで 0x00) と 2
番目の文字
(すなわち、ASCII
コードで 0x01) は `0'
に設定されます。
つまり、マルチバイト文字に対してはこれらの文字は使用しません。
3 番目の文字 (0x02) は `2'
に設定されます。これは、マルチバイト文字の
最初の 1
バイトにこの文字が使用されることを表しています。
4 番目の文字 (0x03) は `3'
に設定されます。この文字は、
マルチバイト文字の 1
バイト目にも 2
バイト目にも使用されます。
5 番目および 6
番目の文字 (0x04, 0x05) は `2'
に設定されます。
これは、これらの文字がマルチバイト文字の
2
バイト目に使用されることを
表しています。
GNU fileutils バージョンの ls では、-N ( --literal ) オプションが ついていないとマルチバイト文字のファイル名を表示できません。 もし、fileutils バージョンを使っている場合は、dspmbyte の 2 番目の文字を "ls" に設定してください。そうしないと、 たとえば "ls-F -l" でマルチバイト文字のファイル名が表示できません。
デフォルトでは、ローカルシステムのデフォルトに設定されます。 BSD ならびに System V オプションは、適当なシステムの echo(1) マニュアルページに解説があります。
ログインシェルにいる場合には、シェルの起動時刻後にファイルが 変更されない限り、どのメールファイルも報告されません。 これは、余計に通知しないようにするためです。 大部分の login プログラムでは、ログイン時にメールが届いているかどうかを 教えてくれるものです。
mail で指定されたファイルがディレクトリである場合、 シェルは、ディレクトリ中の各ファイルを別々のメッセージとして計算し、 `You have n mails.' とか `You have n mails in name.' とかと適切に報告します。この機能は、主に Andrew Mail System のように、 メールをこの方式で保存するシステム用に提供されたものです。
mail の最初の単語が数値である場合、それはメールチェックの 間隔を変えるものとして受け取られます。秒単位です。
とても稀な状況下ですが、シェルが `You have new mail.' ではなく `You have mail.' と報告することがあります。
`%B', `%S', `%U', `%{string%}' は、 8bit クリーンなシェルでのみ利用できます。 version シェル変数を参照してください。
ボールド、スタンドアウト、下線といったシーケンスは、 スーパーユーザのシェルを区別するために使われることが多いです。 たとえば、
`%t', `%@', `%T', `%p', `%P' のどれかが使われていて、 かつ noding が設定されていなければ、 毎正時 (`:00' 分) には実際の時刻の代わりに `DING!' を表示します。
対話的シェルでのデフォルトは `%# ' です。
`chase' に設定すると、 カレントディレクトリがシンボリックリンクを含むディレクトリになったら、 リンクをそれが指しているディレクトリの実名に展開します。 この機能はユーザのホームディレクトリでは働きません。これはバグです。
`ignore' にすると、 このシェルはリンクを通ってカレントディレクトリを移動する場合、 移動先のディレクトリを現在のディレクトリに対する 相対位置として構築しようとします。 これはすなわち、シンボリックリンクを通して cd を行い、 続いて `cd ..' を行うと、 元のディレクトリに戻る、ということを意味します。 これは組み込みコマンドとファイル名補完にのみ影響します。
`expand' に設定すると、シェルはパス名のように見える引き数を 実際に展開して、シンボリックリンクを元に戻そうとします。 これは組み込みコマンドのみならず、すべてのコマンドに影響します。 残念ながら、これは認識しにくいファイル名 (たとえばコマンドオプションに埋めこまれたものなど) には動作しません。 クォートすれば展開は行われません。 たいていの場合はこの設定が便利ですが、 展開すべき引き数を認識できないと、誤解や混乱の元になるかもしれません。 妥協案として、 `ignore' にしておいて、 必要な場合には編集コマンド normalize-path (デフォルトでは ^X-n にバインドされています) を使うのがいいかもしれません。
順にいくつか例を示します。 まずは遊び場となるディレクトリを準備しましょう。
symlinks が設定されていない場合の動作:
symlinks が `chase' に設定されている場合の動作:
symlinks が `ignore' に設定されている場合の動作:
symlinks が `expand' に設定されている場合の動作:
いくつか注意しますと、`expand' による展開は、 1) cd のような組み込みコマンドに対しては `ignore' のように働きます。 2) クォートすれば行われません。 3) 非組み込みコマンドの場合は、ファイル名を渡す前に行われます。
BSD 資源制限機能の無いシステムでは、 最初の 4 つのシーケンスだけがサポートされています。 デフォルトの時間フォーマットは、 資源使用報告をサポートしているシステムでは `%Uu %Ss %E %P %X+%Dk %I+%Oio %Fpf+%Ww' で、 そうでないシステムでは `%Uu %Ss %E %P' です。
Sequent の DYNIX/ptx では、 %X, %D, %K, %r, %s が使えませんが、 以下の追加シーケンスが利用できます。
デフォルトの時間フォーマットは `%Uu %Ss $E %P %I+%Oio %Fpf+%Ww' です。 マルチプロセッサでは CPU 使用率が 100% より高くなることがあります。
システム管理者は、文字列を追加して ローカルバージョンでの違いを示すようにできます。
は、ユーザ `george' の ttyd1 での行動を、 そしてあらゆるユーザのコンソールでの行動を、 そして自分自身 (または不法侵入者) のすべての端末での行動を報告します。
デフォルトでは、ログインとログアウトは 10 分毎に調べられますが、 watch の最初の単語に、調べる間隔を分単位で書くこともできます。 たとえば、
は 1 分おきにあらゆるログイン / ログアウトを報告します。 我慢の効かない人は、log 組み込みコマンドを用いれば、 いつでも watch のレポートを見ることができます。 watch が最初に設定された時には、 現在ログインしているユーザリストが (log 組み込みコマンドによって) 報告されます。
watch の報告形式は who シェル変数で制御します。
%M と %m は /etc/utmp にリモートホスト名を 格納するシステムでのみ利用できます。 設定しなければ `%n has %a %l from %m.' が用いられます。 ただしリモートホスト名を格納しないシステムでは `%n has %a %l.' が用いられます。
デフォルトから変更したい変数だけを指定すれば OK です。
ファイルの名前を、ファイル名の拡張子をもとに色づけすることもできます。 これの指定は、LS_COLORS 変数に "*ext=string" のシンタックスを用いて行います。 たとえば、ISO 6429 のコードを使いすべての C 言語のソースファイルを ブルーに色づけするには "*.c=34" と指定すればよいでしょう。 これは .c で終わるすべてのファイルをブルー (34) に色づけします。
コントロールキャラクタは C スタイルのエスケープ表記か stty のような ^- 表記のどちらかで書くことができます。C スタイルの表記では エスケープコードの記述に ^[, スペースコードの記述に _, デリートコードの記述に ? を追加します。 さらに、^[ エスケープキャラクタを用いると、 ^[, ^, :, = のデフォルトの解釈を 変更することができます。
それぞれのファイルは <lc> <color-code> <rc> <filename> <ec> のように書かれます。 <ec> が未定義ならば、<lc> <no> <rc> のシーケンスが代わりに使われます。 こちらの方が通常便利に使えますが、あまり一般的ではありません。 left, right, end のコードを用意した理由は、 同じシーケンスを繰り返し入力しなくてもいいように、また、 妙な端末に対応できるようにするためです。 通常は、ISO 6429 カラーシーケンスと異なるシステムを使っていない 限り、これらを変更する必要はほとんどありません。
端末が ISO 6429 color コードを使っていれば、(lc, rc, ec コードを全く使わずに) セミコロンで区切られた数字のコマンドで タイプコードを構成することができます。 良く用いられるコマンドは以下の通りです。
すべてのコマンドがすべてのシステムや表示装置で 動作するわけではありません。
少なからぬ端末プログラムではデフォルトの終了コードを正しく 認識しません。ディレクトリのリストをした後ですべてのテキストに 色を付けるためには、no コードと fi コードを、 それぞれ 0 から前景色、背景色の数値コードへ変更してみてください。
スタートアップファイルの読み込みの順番は、 シェルのコンパイル時に変更されているかもしれません。 スタートアップとシャットダウンと version を参照してください。
このマニュアルでは、tcsh をひとつの対象として記述してきました。 しかし csh(1) の経験者は、 tcsh の新しい機能に特に興味があるでしょう。
コマンド行編集: GNU Emacs スタイルや vi(1)-スタイルの キーバインディングをサポートしています。 コマンド行エディタと編集コマンドを参照してください。
プログラマブルで対話的な単語補完と一覧表示。 補完と一覧と、組み込みコマンド complete, uncomplete の記述を見てください。
ファイル名、コマンド、変数名のスペル訂正 (そちらも参照)。
エディタ編集コマンド (そちらも参照) で、 コマンドのタイプ中に他の便利な機能を実行できます。 ヘルプファイルの参照してください (run-help)、 手軽にエディタの再起動 (run-fg-editor)、 コマンド解決 (which-command) などができます。
高性能化されたヒストリ機能。 ヒストリリストのイベントにタイムスタンプをつけられます。 history コマンドおよびそれに関連するシェル変数、 ヒストリ置換に記述されている、 以前には文書化されていなかった `#' イベント記述子と新しい修正子、 *-history, history-search-*, i-search-*, vi-search-*, toggle-literal-history 各編集コマンド、 シェル変数 histlit なども参照してください。
高性能化されたディレクトリ解釈 (parsing) とディレクトリスタック操作。 cd, pushd, popd and dirs コマンドとそれらに 関連するシェル変数、ディレクトリスタック置換での説明、 dirstack, owd, symlinks シェル変数、 normalize-command, normalize-path 編集コマンドなどを参照してください。
グロブパターンの否定。 ファイル名置換を見てください。
新しいファイル問い合わせ演算子 (そちらも参照) とそれらを用いる組み込みコマンド filetest。
スケージューリングされたイベント、特別なエイリアス、自動ログアウト、 端末のロック、コマンド待ち、ログインとログアウトの監視などなどを含む、 各種の自動イベント、定期イベント、時刻指定イベント (それぞれの項目を参照)。
固有言語システムのサポート (固有言語システムのサポートを見てください)、 OS 固有の各種機能のサポート (OS 固有機能のサポートと echo_style シェル変数を参照)、 システム依存のファイル配置 (関連ファイルを参照)
拡張された端末管理能力 (端末管理を参照)。
builtins, hup, ls-F, newgrp, printenv, which, where などの新しい 組み込みコマンド (それぞれの項目を参照)。
新しい変数。シェルから便利な情報を簡単に入手できます。 gid, loginsh, oid, shlvl, tcsh, tty, uid, version シェル変数と、 HOST, REMOTEHOST, VENDOR, OSTYPE, MACHTYPE 環境変数。 それぞれの説明を見てください。
有用な情報をプロンプト文字列に埋めこむための新しいシンタックス (prompt を参照)。 ループとスペル訂正用の特別なプロンプト (prompt2 と prompt3 を参照)。
読み取り専用の変数 (変数置換を参照)。
サスペンドされたコマンドが再開されたときに、 カレントディレクトリが起動されたときと違っている場合には、 起動時のディレクトリを表示します。 ジョブが内部でディレクトリを変更することもあり得るので、 これは間違った情報を与えてしまうかもしれません。
シェルの組み込み機能は停止、再開できません。 `a ; b ; c' のような形のコマンド列を停止させるときの処理も あまり上品なものではありません。 `b' コマンドをサスペンドさせると、 シェルは即座に `c' コマンドを実行してしまいます。 alias での展開結果を実行しているときには、 特にこの点に注意が必要です。 コマンド列を () の中に入れて、 サブシェルに押し込めてしまうのがいいでしょう。 つまり `( a ; b ; c )' のようにするのです。
プロセス開始後の端末出力の制御が原始的です。 誰かが仮想端末の良いインタフェースを作ってくれるといいのですが。 仮想端末インターフェースの分野では、 出力制御に関して面白いことがたくさん行えるはずです。
エイリアス置換がシェル手続きのシミュレートに大変良く用いられますが、 これはあまり気のきいたものではありません。 エイリアスよりもシェル手続きを提供すべきです。
ループの中のコマンドは、ヒストリリストに追加されません。 制御構造は、組み込みコマンドとしては認識されず、単に解釈されます。 したがって制御コマンドはどこにでも置くことができ、 パイプ `|' といっしょにも、 `&' と `;' のようなメタシンタックスといっしょにも使えます。
foreach は end を探しているとき ヒアドキュメントを無視しません。
`:' 修飾子は、 コマンド置換の出力に使えるべきです。
ダム端末のように、端末がカーソルを上に移動できない場合には、 スクリーン幅より長い行の更新が大変貧弱です。
HPATH と NOREBIND は環境変数である必要はありません。
`?' や `*' や `[]' を使わないグロブパターンや、 `{}' や `~' を使うグロブパターンは、否定が正しく扱われません。
if の単一コマンド形式では、たとえ式が偽で、 コマンドが実行されなかったとしても、リダイレクト出力をしてしまいます。
ls-F はファイル名をソートするとき、 ファイル識別キャラクタを勘定に入れてしまいます。 またファイル名の中の制御文字を正しく扱うことができません。 中断させることもできません。
バグレポートは tcsh-bugs@mx.gw.com まで送ってください。 修正もいっしょに送っていただけるとありがたいです。 もし tcsh のメンテナンスとテストを手伝って下さる場合には、 本文に "subscribe tcsh <your name>" と一行書いたメールを listserv@mx.gw.com に送ってください。 "subscribe tcsh-bugs <your name>" を講読すれば すべてのバグレポートが取得できます。 "subscribe tcsh-diffs <your name>" を講読すれば 開発 ML に参加でき、各パッチレベルでの diff を入手できます。
1964 年 DEC は PDP-6 を開発しました。 のちに PDP-10 が再実装されました。 1970 年前後に DEC がそのセカンドモデル KI10 を発表したとき、 これには DECsystem-10 という新しい名前がつけられました。
TENEX は 1972 年に Bolt, Beranek & Newman (Massachusetts 州 Cambridge のシンクタンク) において、 実験的なデマンドページ型仮想記憶 OS として作られました。 彼らは DEC PDP-10 用の新しいページャを構築し、 それを使った OS を作りました。 これは学術分野で非常に大きな成功を収めました。
1975 年 DEC は PDP-10 の新しいモデル KL10 を発表しました。 DEC は BBN から TENEX のライセンスを受け、 KL10 は TENEX 版のみにするつもりでした。 DEC はそれらのバージョンを TOPS-20 と呼んでいました (大文字化は商標です)。 多くの TOPS-10 ("The OPerating System for PDP-10" の頭文字です) ユーザが これに反対しました。 こうして DEC は同じハードウエアにふたつの互換性のないシステムを サポートしなければならないことになりました。 --でもそのとき PDP-11 には 6 つの OS があったのですが!
TENEX の TOPS-20 はバージョン 3 までに、 ULTCMD と呼ばれるユーザコードレベルのコマンド補完機能サブルーチンを 備えていました。バージョン 3 で DEC は、 これらの機能すべてと、さらにそれ以上とをモニタ (Unix でいうところのカーネル) に追加し、 COMND& JSYS (`Jump to SYStem' 命令; スーパーバイザーを呼び出す機能 [私が IBM 上がりだってバレちゃった?]) でアクセスできるようにしました
tcsh の作者たちは TENEX と TOPS-20 における これらの機能に影響を受け、これを模倣した版の csh を作成したのです。
単語は 1024 文字より長くできません。
システムは引数並びを 10240 文字までに制限しています。
コマンドに与える引き数の数 (ファイル名展開を含む) は、 引き数リストに許された文字数の 1/6 までに制限されています。
コマンド置換では、 引数リストに許された文字数より多くの文字数に置換できません。
シェルはループを検出するために、 alias 置換の回数を 1 行当たり 20 に制限しています。
csh(1), emacs(1), ls(1), newgrp(1), sh(1), setpath(1), stty(1), su(1), tset(1), vi(1), x(1), access(2), execve(2), fork(2), killpg(2), pipe(2), setrlimit(2), sigvec(2), stat(2), umask(2), vfork(2), wait(2), malloc(3), setlocale(3), tty(4), a.out(5), termcap(5), environ(7), termio(7), Introduction to the C Shell
このマニュアルは tcsh 6.11.00 (Astron) 2001-09-02 に関するドキュメントです。
以下のみなさんに感謝します。
Bryan Dunlap, Clayton Elwell, Karl Kleinpaste, Bob Manson, Steve Romig, Diana
Smetters, Bob Sutterfield, Mark Verber, Elizabeth Zwicky
そして提案と応援をしてくれたオハイオ州のすべてのみなさん。
あらゆるバージョンに耐え、バグレポートを送ってくれ、 提案と新規追加をしてくれたネット上のすべてのみなさん。
"tcsh の T の由来" の章を執筆してくれた Richard M. Alderson III。
t_ogawa <BYH06106@nifty.ne.jp>
おさな <yasu@via2000.net>
ゆ〜こ <yuko@veltec.co.jp>
森浩二 <mori@tri.asanuma.co.jp>
NOKUBI Hirotaka <nokubi@ff.iij4u.or.jp>
中野武雄 <nakano@apm.seikei.ac.jp> (JM
プロジェクト)
蔭山 <yt-kage@cb3.so-net.ne.jp>
中村和志@神戸
<kaz@kobe1995.net>
大澤千敏@岐阜
<ohsawa@catv1.ccn-net.ne.jp>
熊谷典大 <kumagai@home.com>
(順不同)
翻訳にあたり、JM プロジェクトの方々の御協力を頂きました。
2 September 2001 | Astron 6.11.00 |