書式
dc [-V] [--version] [-h] [--help]
[-e scriptexpression] [--expression=scriptexpression]
[-f scriptfile] [--file=scriptfile]
[file ...]
解説
dc
は、逆ポーランド形式の無限精度の計算が行える卓上計算機です。
この電卓は、定義やマクロ呼び出しも行えます。
普通、dc
は標準入力から読み込みます。
コマンドライン引数が与えられた時は、それはファイル名となり、
dc
はそのファイルを読み込み、ファイルの内容を実行した後で、
標準入力から入力を取ります。
通常の出力はすべて標準出力へ、エラー出力はすべて標準エラー出力へ
送られます。
逆ポーランド記法計算機は、数字をスタックに保存します。
数字を入力すると、それをスタックに積み上げます。
計算操作は、引数をスタックから取り出し、結果をスタックに積み上げます。
数字を dc
に入力するためには、数字
(小数点が有っても構いません)
を入力します。
指数表現はサポートされていません。
負の数字を入力するためには、``_''
で始まる数字を入力します。
``-''
は減算の二項演算子として使われているので、
このために利用することはできません。
引き続いて 2
つの数字を入力するためには、あいだに空白文字か改行文字を
入力します。
これらは、コマンドとしての意味はありません。
オプション
dc
は、次のコマンドラインオプション付きで起動可能です:
- -V
- --version
- 実行される dc
のバージョンと著作権情報を表示し、終了します。
- -h
- --help
- これらのコマンドラインオプションを短くまとめたメッセージと
バグ報告アドレスを表示し、終了します。
- -e script
- --expression=script
- script
中のコマンドを、入力処理中に実行するコマンド集合に追加します。
- -f script-file
- --file=script-file
- ファイル script-file
中のコマンドを、入力処理中に実行するコマンド集合に追加します。
上記オプションの処理後にコマンドラインパラメータが残った場合、
これらのコマンドラインパラメータは処理対象の入力ファイル名として
解釈されます。
ファイル名 -
は、標準入力ストリームを指します。
ファイル名を指定しないと、標準入力が処理されます。
表示コマンド
- p
- スタックを変更することなく、スタックの先頭の値を表示します。
改行文字が、値の後に表示されます。
- n
- スタックの先頭の値を表示し、スタックから取り出します。
改行文字は、後に表示されません。
- P
- スタックの先頭の値をスタックから取り出します。
値が文字列の場合、末尾の改行を付けずに、単に表示します。
そうでない場合、これは数値であり、数値の絶対値の整数部分が、
"基数 (UCHAR_MAX+1)"
のバイトストリームとして表示されます。
ここで (UCHAR_MAX+1) は 256
を仮定すると
(ほとんどのマシンでは
8
ビットバイトなので)、文字列
KSK 0k1/ [_1*]sx d0>x [256~aPd0<x]dsxx sxLKk
もまたこの機能を実現しますが、
x
レジスタを潰してしまう副作用が違います。
- f
- 変更することなく、
スタックの内容全部を表示します。
これは、忘れてしまった時に使ったり、あるコマンドがどのような効果を
もたらすのかを知りたい時には、良いコマンドです。
計算
- +
- 2
つの値をスタックから取り出し、加算を行い、結果をスタックに積みます。
結果の精度は、引数の値にだけによって決まり、十分正確です。
- -
- 2
つの値を取り出し、最初に取り出した値を
2
番目に取り出した値から
引きます。その後、結果をスタックに積みます。
- *
- 2
つの値を取り出し、かけ算を行い、結果をスタックに積みます。
結果の小数の桁数は、
現在の精度値
(以下参照) と 2
つの引数の小数の桁数に依存します。
- /
- 2
つの値を取り出し、2
番目に取り出した値を最初に取り出した値で割り、
結果をスタックに積みます。
小数の桁数は、精度値によって指定されます。
- %
- 2 つの値を取り出し、
/
で計算された割算の余りを計算し、結果をスタックに積みます。
計算される値は、文字列
Sd dld/ Ld*-
で計算される値と同じです。
- ~
- 2
つの値を取り出し、2
番目に取り出した値を最初に取り出した値で割り、
その商を先にスタックに積み、続いて余りを積みます。
割算に使われる小数の桁数は、精度値によって指定されます。
(エラーチェック機構はわずかに異なりますが、文字列
SdSn lnld/ LnLd%
もこの機能と同様に働くでしょう。)
- ^
- 2
つの値を取り出し、最初に取り出した値を指数とし、
2
つめの値を底として指数計算します。
指数の小数点以下は無視されます。
精度値は、結果の小数の桁数を指定します。
- |
- 3
つの値を取り出し、べき剰余
(modular exponentiation)
を計算します。
最初に取り出した値は法
(reduction modulus) (この値は 0
以外の整数で
なくてはいけません。)
、2
番目に取り出した値は指数
(この値は
非負の数字でなければならず、小数点以下は無視されます。)、
3
番目に取り出した値は累乗される底として用いられます。
これは整数であるべきです。
小さな整数に関しては、この機能は文字列
Sm lble^ Lm% のように
働きます。しかし、^
を使う場合と違い、このコマンドは指数が
非常に大きくても働くはずです。
- v
- 1
つの値を取り出し、平方根を求め、結果をスタックに積みます。
精度値は、結果の小数の桁数を指定します。
ほとんどの演算子は、``精度値''
に影響を受けます。
精度値は、 k
コマンドで設定することができます。
デフォルトの精度値は
0
です。これは、足し算と引き算を除くすべての算術は
整数値の結果を出すことを意味しています。
スタックの制御
- c
- スタックを消去し、空にします。
- d
- スタック先頭の値を複製し、スタックに積みます。
したがって、``4d*p'' は 4
の自乗を計算し、表示します。
- r
- スタック先頭の値と 2
番目の値の順番を入れ換えます。(交換します。)
レジスタ
dc は、少なくとも
256
個のメモリレジスタを持っています。
各レジスタは、1
文字の名前を持っています。
数字や文字列をレジスタに保存し、後で取り出すことができます。
- sr
- スタックの先頭から値を取り出し、レジスタ
r に保存します。
- lr
- レジスタ r
の値を複製し、それをスタックに積みます。
これは、 r
の内容を変更しません。
各レジスタは、それ自身のスタックを持っています。
現在のレジスタ値は、レジスタスタックの先頭です。
- Sr
- (メイン)
スタックの先頭の値を取り出し、レジスタ
r
のスタックにそれを積みます。
レジスタの以前の値は、アクセスできなくなります。
- Lr
- レジスタ r
のスタックの先頭の値を取り出し、それをメインスタックに積みます。
レジスタ r
のスタックにあった以前の値がもしあれば、
lr
コマンドを使ってアクセス可能となります。
パラメータ
dc
は、その操作を制御するための
3
つのパラメータを持っています:
精度と、入力の基数、出力の基数です。
精度は、ほとんどの算術操作の結果で保存される小数の桁数を指定します。
入力の基数は、入力された数字の解釈を制御します。
入力されたすべての数字はこの基数をつかっているとされます。
出力の基数は、表示する数字で使われます。
入力と出力の基数は、分離されたパラメータです。
等しく設定しなくてもいいですが、これは便利だったり紛らわしかったりします。
入力の基数は 2 から 16
の範囲でなければなりません。
出力の基数は最低 2
でなければなりません。
精度は 0
以上でなければなりません。
精度は、現在の入力基数や出力基数に関係なく、いつも
10
進の桁数で決められます。
- i
- スタックの先頭から値を取り出し、入力基数を設定するために使います。
- o
- スタックの先頭から値を取り出し、出力基数を設定するために使います。
- k
- スタックの先頭から値を取り出し、精度を設定するために使います。
- I
- 現在の入力基数をスタックに積みます。
- O
- 現在の出力基数をスタックに積みます。
- K
- 現在の精度をスタックに積みます。
文字列
dc
は、数と同じように文字列を操作できます。
文字列に対してできる唯一のことは、それを表示し、マクロとして
実行することです。
マクロとは、dc
コマンドとして実行される文字列の内容のことです。
すべてのレジスタとスタックは文字列を保存できます。
そして、dc
はいつも、与えられたデータが文字列か数字かを
知っています。
算術操作のようないくつかのコマンドは、数を必要としており、
文字列が与えられた場合はエラーが表示されます。
他のコマンドは、数字か文字列を受け入れることができます。
例えば、 p
コマンドは、両方を受け付けることができ、データをその型に応じて
表示します。
- [characters]
- (左右の釣合のとれた、
[ と ] で囲まれた )
characters
という文字列を作り、それをスタックに積みます。
例えば、 [foo]P
は文字列 foo
を表示します
(が、改行文字は表示しません)。
- a
- スタック先頭の値を取り出し、それが数字なら、その低位バイトを
文字列に変換し、スタックに積みます。文字列なら、その最初の文字が
スタックに積み戻されます。
- x
- スタックから値を取り出し、マクロとして実行します。
普通、これは文字列です。数の場合は、単純にその値がスタックに
積み戻されます。
例えば、 [1p]x
は、マクロ 1p
を実行します。 1p
は、 1
をスタックに積み、別の行に
1 を表示します。
マクロは、しばしばレジスタにも保存されます。
[1p]sa は、 1
を表示するためのマクロを
レジスタ a
に保存します。 lax
でこのマクロは実行できます。
- >r
- スタックから 2
つの値を取り出し、それらを数と仮定して比較し、
もともとのスタックの先頭が大きい場合、レジスタ
r
の内容を実行します。
したがって、 1 2>a
は、レジスタ a
の内容を実行しますが、
2 1>a
では実行しません。
- !>r
- 似ていますが、もともとのスタックの先頭が
2
番目の値よりも大きくない場合
(2
番目の値以下である場合)、マクロを起動します。
- <r
- 似ていますが、もともとのスタックの先頭が小さい場合にマクロを実行します。
- !<r
- 似ていますが、もともとのスタックの先頭が
2
番目の値よりも小さくない場合
(2
番目の値以上である場合)、マクロを起動します。
- =r
- 似ていますが、2
つの取り出された値が等しい場合にマクロが実行されます。
- !=r
- 似ていますが、2
つの取り出された値が等しくない場合にマクロが実行されます。
- ?
- 端末から行を読み込み、実行します。
このコマンドは、ユーザからの入力を要求するためのマクロで使えます。
- q
- マクロを終了し、それを呼び出したマクロからも終了します。
一番上のレベルか、一番上のレベルから直接呼ばれたマクロから呼ばれると、
q コマンドは dc
を終了します。
- Q
- スタックから値を取り出し、それを終了すべきマクロレベル数として、
その数のマクロを終了します。
したがって、 3Q
は、3
つのレベルを終了します。
Q コマンドでは、dc
を終了することはありません。
状態の問い合わせ
- Z
- スタックから値を取り出し、その桁数
(文字列の場合は、文字数)
を計算し、
その値をスタックに積みます。
- X
- スタックから値を取り出し、その小数点以下の桁数を計算し、
その値をスタックに積みます。文字列の場合、スタックには
0 が積まれます。
- z
- 現在のスタックの深さを、スタックに積みます。
スタックの深さとは、
z
コマンドが実行される前のスタックのデータ数です。
その他のさまざまなこと
- !
- 行の末尾までをシステムコマンドとして実行します
(シェルエスケープ)
。 コマンド !<, !=, !>
のパーズが優先しますので、<,
=, > で開始する
コマンドを起動したい場合には、!
の後に空白を加える必要があります。
- #
- 行の末尾までをコメントとして取り扱います。
- :r
- スタックから 2
つの値を取り出します。
スタックの先頭だった値で配列
r
をインデックスし、スタックの先頭から
2
番目だった値をそこに保存します。
- ;r
- スタックから値を取り出し、配列
r
のインデックスとして利用します。
配列から選ばれた値は、その後でスタックに積まれます。
バグ
バグ報告は、
bug-dc@gnu.org
に電子メールでお願いします。
単語 ``dc'' を ``Subject:''
フィールドのどこかに入れておいてください。