SIGALTSTACK(2) | Linux Programmer's Manual | SIGALTSTACK(2) |
sigaltstack - シグナルスタックのコンテキストを設定・取得する
#include <signal.h>
int sigaltstack(const stack_t *ss, stack_t *oss);
glibc
向けの機能検査マクロの要件
(feature_test_macros(7) 参照):
sigaltstack():
sigaltstack() を使うと、 プロセスは新しい代替シグナルスタックを定義したり、 既存の代替シグナルスタックの状態を取得できる。 シグナルハンドラーが代替シグナルスタックを要求するように設定されていると (sigaction(2) 参照)、ハンドラーの実行中はそのシグナルスタックが使われる。
代替シグナルスタックを使う際の一般的な手順は、以下の通りである:
ss 引き数は、新しいシグナルスタックを指定するために使う。 また oss 引き数は、現在確立されている シグナルスタックの情報を取得するために使う。 この操作のうち 1 つだけを実行させるには、 使用しない引き数を NULL に指定すればよい。 引き数となる構造体は、以下のような型である:
typedef struct {
void *ss_sp; /* スタックのベースアドレス */
int ss_flags; /* フラグ */
size_t ss_size; /* スタックのバイト数 */ } stack_t;
新規の代替シグナルスタックを確立するには、 ss.ss_flags を 0 に設定し、 ss.ss_sp と ss.ss_size に スタックの開始アドレスとスタックサイズを指定する。 定数 SIGSTKSZ は、代替シグナルスタックが通常必要する サイズよりも充分大きく定義されている。 また定数 MINSIGSTKSZ は、 シグナルハンドラーの実行に必要な最小サイズに定義されている。
代替スタックでシグナルハンドラーが起動された場合には、 カーネルにより自動的に、ss.ss_sp で指定されたアドレスは 動作しているハードウェアアーキテクチャーに適したアドレス境界に 調整される。
既存のスタックを無効にするには、 ss.ss_flags を SS_DISABLE に指定する。 この場合、ss の他のフィールドは無視される。
oss が NULL 以外の場合、 oss に代替シグナルスタックの情報が返される。 これは (実質的に) sigaltstack() の呼び出しより先に行われる。 oss.ss_sp と oss.ss_size フィールドに スタックの開始アドレスとスタックサイズが返される。 oss.ss_flags には以下のどちらかの値が返される:
sigaltstack() は成功した場合 0 を返す。 失敗した場合は -1 を返して、 エラーを示す値に errno を設定する。
SUSv2, SVr4, POSIX.1-2001.
代替シグナルスタックを使用する最もよくある場面は、 SIGSEGV シグナルを扱うときである。 SIGSEGV はプロセスの通常のスタックが利用できる空間が使い果たされた際に 生成されるシグナルである。この場合には、 SIGSEGV 用のシグナルハンドラーをプロセスのスタック上では起動することができない。 そのため、このシグナルを扱おうとする場合には、 代替シグナルスタックを使用しなければならない。
プロセスが標準のシグナルスタックを使い果たすことが予想される場合は、 代替シグナルスタックを確立すると便利である。 例えば、スタックが最上位アドレスから 下位アドレス方向に非常にたくさん積まれてしまうことで、 最下位アドレスから上位アドレス方向に積まれるヒープとぶつかってしまう場合や、 setrlimit(RLIMIT_STACK, &rlim) の呼び出しで確立された 制限に達してしまった場合に、この様な事が起こる。 標準のスタックを使い果たしてしまうと、 カーネルはプロセスに SIGSEGV シグナルを送る。 このような状況では、代替シグナルスタック上でしかシグナルをキャッチできない。
Linux がサポートする多くのハードウェアアーキテクチャーでは、 スタックは下位アドレス方向に積まれる。 sigaltstack() はスタックが積まれる方向を自動的に決定する。
代替シグナルスタック上で実行されている シグナルハンドラーから呼ばれる関数も、代替シグナルハンドラーを使う (プロセスが代替シグナルスタック上で実行されている場合、 他のシグナルで呼び出されるハンドラーもこの代替シグナルハンドラーを使う)。 標準のスタックとは異なり、 システムは代替シグナルスタックを自動的に拡張しない。 代替シグナルスタック用に確保したサイズを越えた場合、 結果は予想できない。
execve(2) の呼び出しが成功すると、 既存の全ての代替シグナルスタックが削除される。 fork(2) 経由で作成された子プロセスは、親プロセスの代替シグナルスタックの 設定のコピーを継承する。
sigaltstack() は以前の sigstack() を置き換えるものである。 過去プログラムとの互換性のため、glibc では sigstack() も提供している。 新しいのアプリケーションは全て sigaltstack() を使って書くべきである。
4.2BSD には sigstack() システムコールがあった。 この関数は少し異なった構造体を使っており、 呼び出した側がスタックの積まれる方向を知っていなければならないという 大きな欠点があった。
以下のコードで sigaltstack() の使用法の一部を示す:
stack_t ss; ss.ss_sp = malloc(SIGSTKSZ); if (ss.ss_sp == NULL)
/* ハンドルエラー */; ss.ss_size = SIGSTKSZ; ss.ss_flags = 0; if (sigaltstack(&ss, NULL) == -1)
/* ハンドルエラー */;
execve(2), setrlimit(2), sigaction(2), siglongjmp(3), sigsetjmp(3), signal(7)
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部である。 プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
2010-09-26 | Linux |